悪ルン太

　昔、友人が「越後屋、オマエも悪よのぉ」という時代劇でおなじみのフレーズの「悪」を「アク」と読むので、それは「ワル」でなければなるまい、と思ったものだった（指摘はしたが直らず「アクよのぉ」が彼のお気に入りフレーズになっていた）。
　悪代官の「悪」は「アク」、悪人とか悪党とか悪太郎とか、では名詞が続けば「アク」かと思うと悪者は「ワル」だから、日本語は難しい。
　で、そんなことはどうでも良く、悪太郎ならぬ悪ルン太の・・・悪七兵衛とか悪源太とか『平家物語』に名称の前に悪をつけて呼称される人が頻出するのだが、この場合の「悪」は悪いの意味より強いの意味合いが濃厚で、ルンの悪も同様だ。
　和十姉妹のルン太くんは手乗りのくせにもっとも可愛げのない奴だが、カゴの中で威張っており、気に入らない同居鳥を追い掛け回す。なぜなら、彼らが抱卵を手伝わず邪魔だからである。彼はヨーロッパ十姉妹のナカとペアになっており、ナカが産卵すると豹変するのだ。抱卵を始めたルン太の目は吊り上がり、それまで仲良くしていた他の十姉妹たちを、抱卵を手伝うかどうかで選別し、手伝わない者を追い出そうとする。
　今日はポチが標的となり追いかけられては途中で反撃し、やっぱり逃げる、といった騒ぎを繰り返していた（文鳥のケンカに比べたらまるで平和的）。どうやら、巣の中に入り込むのが抱卵の手伝いではなく、たんにそこで眠るためだということを、ルンに見破られてしまったらしい。
　・・・やむなく、争いの種となる卵を撤去した。産卵が続くようなら、別居を考えなくてはなるまい。