ご存知のように、善良な業者を苦しめ悪徳な業者を野放しにするだけの運用しかできていない「動物愛護法」により、生体は対面販売が義務付けられている。それは、会って話し、生体の現状をしっかり確認して販売することで、トラブルを防ぐためである。
しかしながら、会って見ても、見ていない人は見ていないし、自分が見なかったことを他人の過失のように思ってしまう人もいるので、結局、事前の準備と『自覚』を基にした自己責任でしかない。そのこと示す事例も、この際ご覧いただきたい。
以前(今年の3月中旬)、3羽生まれたうちの2羽が梵天タイプだった手乗り十姉妹を、梵天好きの飼育経験者に2羽ともに分譲することになった(売れ残るノーマルタイプがポチである)。十姉妹のヒナは口が小さく、初心者には飼育しづらいので、こちらは良い飼い主さんと巡り会えたと喜んでいた。
来店され、様子を見せて体重を測って、牧草を敷いた小さいプラスチック容器に入れ、まだ寒かったので、容器の横に使い捨てカイロを貼ってお渡しした。その間、特に何の問題もなく、お客様はノーマルの子(ポチ)には目もくれず、十姉妹用に魔改造した給餌スポイトなどをご覧になって感心されてお帰りになった。直後には、「詳しいアドバイスありがとうございます!指し餌をして元気な様子です」とメールがあったので安心していたところ(それ以前に脚指が曲がって見える旨の電話があった)、夜になって異常を知らせるメールが届き、驚かされることになった。
>帰ってからよく見たら
>
>脚指の心配してる雛とは別の一羽の雛が
>
>目がショボショボして涙が治らないのですが、しっかり開かないのですが、やはりこ
>ちらは、病院に連れていった方が良いのでしょうか?
数時間前まで、普通に遊んでいたヒナである。こちらとしては訳がわからない。手放したばかりのかわいい我が子たちだったので、次のように返信した。
「目がショボショボして涙」などという症状は尋常ではなく、病気を疑う前に、飼育環境に問題がないか、しっかり確認する必要があると思います。
なかなか難しいようでしたら、生き物の安全は飼い主さんがしっかりと確保しなければならないもので、いろいろ有り得る(名医もいればやぶ医者もいます)獣医さんに頼る以前に必要なことは多いように思います。
難しいようでしたら、当店にお戻しいただきますようにお願いいたします。
それに対して、次のメールが届く。
>アドバイスありがとうございます。
>
>私も何度も十姉妹は孵化させ差し餌をし手乗りにしております。
>
>飼育環境も至って良好ですので問題無いです。
>
>雛を迎い入れる準備も、ちゃんとしておりました。
>
>ただ連れて帰ってくる時点で差し餌をする前に目が開きにくい状態と、私の飼育環境
>は関係ありませんよね?
>
>買って一週間経ってからの、言う内容では無いので
>
>難しい以前の問題です。
>
>まだ初日ですから。
>
>雛の状態が健康であると言い張るなら
>
>もう少し大事に様子見ます。
>
>私よりプロな方の、アドバイスを素直に聞きたかっただけですから
>
>残念です。
>
>ありがとうございました。
運送途中のアスファルト塗装工事などでの被爆などいろいろ考えていたのだが、その画像から、自作の飼育容器の内部をベンゼンの類を含む塗装を施して乾燥不十分で換気もしていなかったことで、神経系にダメージを与えてしまった疑いが濃厚と判断、次のように返信した(原文ママ)。
そもそも、ヒナに問題があったのかなかったのかすらわからない。脚がおかしいとかおかしくないとか、この間の経緯がわからない小鳥に関して無知な獣医さんなら、先天的な奇形である跛行(ペローシス)などと言いそうだし(触診すればわかりそうなものだが、そのスキルがない場合も多い)、せまい経験でものを言いたがる人ならタオルなどに指が引っ掛かり足が伸びた状態、などと言い出しそうだが、そういった、有りそうな無駄情報がいくつも頭に入って混乱しているようにしか思えないのである。
愛鳥のために一所懸命情報を集めて思い悩まれたのだろうが、残念ながら、情報過多で処理できなくなってしまったといった印象しか持ち得ない。それはそれで気の毒だが、私から見れば、大切に育てたかわいい十姉妹を私製のガス室送りにして、一瞬にして中毒にしておきながら、健康な子に傷害を負わせながら反省もなく、あまつさえ他人に責任を転嫁しているに過ぎず、はらわたが煮えくり返るだけである。
言いたいことは山ほどあったが、とりあえず「さようなら」と捨て台詞された以上は、あとは、陰ながら十姉妹たちの息災を祈るのみで、その後、一切返信はしていない。
反応がないので気になったのか、数日後に「そう言えば、タッパの中にアリが入っていましたが飼育環境大丈夫ですか?」とだけメールがあり(3月に動き回るとは働き者のアリである。ただ、自然の無農薬処理の牧草には小さな虫がいて当然なので、気になる場合は、一旦冷凍庫に入れてから使用する)、1週間後に「雛の目はほぼ完治してきました。ですが指曲がりはやはり、生まれつきのようです。」との写真添付のメールがあった。
もちろん生まれつきではない。同じ環境で視覚障害を同時に起こしていながら、一方にのみ先天性を疑うこと自体が不合理なのである。この場合、一方は神経麻痺が残ってしまっただけで、この麻痺が軽減するかずっと残ってしまうかは、おそらく誰にもわからない、といった判断が合理的であり、おそらく正解となる。
売り物にケチをつけるなど、それだけでも商売人にケンカを売っているだけになる。まして、この場合は生き物だ。自家繁殖しプライベート同然に育てて健康にお渡しすることに気をつかっている者に対して、これまた、失礼を通り越して無礼でしかなく、むしろ営業妨害になることをわきまえた方が良いだろう。自分を正当化したいがために、他人に落ち度があったことにしたいのだろうが、五体満足でないヒナをそれと知りながら売れば、信用問題となるのである。そもそも信用できない店で購入すべきではないし、信用できないのであれば(前日までの写真まであり、一緒に育ったヒナが五体満足かつ健康優良にもかかわらず信用できないなら、一体何を信用したら良いのだろうか?)、ヒナの健康状態を自分の目で確認する他なく、そのスキルの持ち合わせがないのは購入側の問題でしかない。
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