互締落の先にあるワンコインの幸せ

​​卓上の幸せを満喫する黒頭天使のヒィロ​​
 「シャケベン」と言えば、スーパーなどで「サンキュッパ(398円)」、ところによっては「ニッキュッパ(298円)」、とてもリーズナブルな価格設定がされているお弁当のイメージがあるはずだ。薄っペラペラで、口にすればパッサパサの焼き鮭が乗る弁当、安くても美味いとは言えまい。
 ところが例外はある。『サミット』のそれは、「シャケベン」のくせに480円もするのだ!その値段だけを見れば、責任者呼んで来い!!なのである。しか~し、『サミット』のそれは鮭弁当であって、断じて「シャケベン」ではない。焼き鮭の厚みが違う脂の乗りがまるで違う。
 さて、1コインの幸福感が総菜売り場に鎮座しているかもしれぬ素敵なスーパーへ向かう途中(埼玉県川口市に乗っ取られた鳩ケ谷の駅近く)、『互締落』というバス停がある。読めるだろうか?フリガナが無ければ、私は読めなかったに相違ない。「たがいじめおとし」と読む。・・・柔道の絞技(しめわざ)で意識が落ちてしまいそうな感じだ。
 これは一体何なのだ?で、調べたところ、世の中には奇特な人がいて、市役所(川口市に合併される前の鳩ケ谷市)に問い合わせ、次のような回答を得たとネット上で紹介されていた。
​​ バス停のあるあたりに、芝川と見沼用水をつなぐ農業用水路があり、こうした水路のことを「落(おとし)」というそうです。芝川側と見沼用水側の両方に水門があって、田んぼの水位を見てそれぞれの水門を締めて調整するのだそうで、「互い違いに水門を締めて調整する落」のことだそうです。​​
 なるほど。と納得するには多少の知識が必要になる。
 まず「落」は、「悪水路」と同様に、農業用水を排水する水路を意味する。この地域の北側を見沼代用水が東西に流れており、そこから農業用水を取水し、南側に東西に流れる芝川に排水することで稲作を行っていたようなので(江戸時代にそのように計画されて開墾された)、現場は、その農業用水路のやや大きいものが南北に通っていたものと思われる。
 私のような稲作に縁のない都市民にはピンとこないが、稲作には水の調節が重要不可欠で(だから、大雨の時によせばいいのに用水路の様子を見に行って、命を失ってしまうようなことになる)、単純には田植え期に水を張って、収穫期には乾いた状態にしなければならず、そのため、春、取水口を開け排水口を閉じることで田んぼに水を溜め、秋頃、取水口を閉じ排水口を開けて水を落とすことで田んぼを乾燥させねばならない。したがって、おそらく当地の昔の人たちは、この取水排水に用いた水路を『互締(たがいじめ)』と呼んで、バス停のある辺りはその排水側(落側)の水門があったと見なせよう。
 ・・・かくて、突発的知的好奇心は満たされた。以前、幼少時に遊んだ「桃太郎公園」の桃太郎像が、実はマニアックな存在だったので驚かされた(​2017年06月18日​)。そういった発見があるのは楽しい(夏休みの自由研究のネタなどそこら中に転がっているわけである)。

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