豊橋発コキンチョウに危機迫る

野生にはいない白文鳥さん(アリィ)
 テレビ朝日の夕方のニュースを見ていたら(ニュースのはしごをしていた)、例の展示にコキンチョウが数羽混じっていて、それが「種の保存法」に違反するので保護された、などと言っており、驚愕した。確認すると、あの中日新聞が、「トリエンナーレ展示の小鳥は「譲渡禁止」 ずさん管理また発覚」と見出しを打って、昨日ずいぶんえらそうに書いていた(記事)。
 種の保存法で禁止されているのは、基本的には野生種に関してだ。飼育して品種改良している家禽に対しては、普通、問題視されない。私の感覚では、「法規制を知らない」どころか現実を知らないのは、コキンチョウを保護対象と見なす「県側が助言を求めた専門家」で、『TSUBASA』さんの言葉を借りれば(ブログ確認したら、この部分は、なぜか現在削除されていたけど、お気に入りなので、また、引用しちゃう)「「専門家」にもいろいろな「専門」があります。今回、このような事態に陥ったのは、「専門家」の選択に問題があったことは否めません」の好例ではなかろうか?
 「種の保存法」は略称で、本当は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」と言う。野生、の部分が重要で、一般的な解釈としては、現在、小鳥が好きで素朴に小鳥屋さんをやっていただけなのに、大騒動に巻き込まれて気の毒な「小鳥店」のコメント、「2国間の輸出入禁止は知っていたが、国内で繁殖した個体だから問題ないと思った」とする解釈が普通である。何しろ、飼育種は代々の繁殖で改良されていて、もはや野生には戻れず、戻した場合は、かえって野生の遺伝子を変えてしまいかねない存在となっており、事実上の別種と考えるべきだからである。
 ただ、環境省のお役人の担当者が、「県側が助言を求めた専門家」同様に、法律の足りない文章を額面通り解釈し、現実離れした解釈をしないとも限らない。その場合、恐ろしいことに、野生の姿とは色柄が違っているコキンチョウ(カラーバリエーションは品種改良によりとても多様になっている)の飼育も難しくなり、分類学上は同種だからというだけの理由付けで、全国のコキンチョウ愛好者の悲嘆と、飼育されている数多のコキンチョウに犠牲を強いて(保護?慣れない環境に移すだけでも、生命に危険が及ぶ。あの展示にしても、環境の変化が体調を壊す主因だろう)、なぜか日本に限ってその飼鳥文化が途絶することになってしまう、かもしれない。
 他人事ではない。文鳥の野生種も本来の生息地では減少しているのだ。もし、さらに絶滅が危惧される状態になれば、「種の保存法」が乱用され、どう考えても全く無関係な我々の文鳥の飼育が否定されることになってしまいかねないではないか(その時オレの目が黒かったら覚悟しろ!)
 野生種の絶滅を防ぐのとは、まったく無関係な飼育種に犠牲を強いて、同じ「種」だから法律に従え、それが「県側が助言を求めた専門家」の解釈なのである。しかし、同じ「種」でも、現実的には別種として存在するので、無関係とするのが普通の解釈で、おそらく、それがグローバルスタンダードだ(だって、世界中で飼育されてるんだもん)。中日の記者も、テレ朝のディレクターも知らないが、素朴な「小鳥店」はそれを知っていたわけである。確かに専門家はいろいろだが、市井の現実における専門家としては、私に言わせれば、よほど、まとも、だ。
 ともあれ、コキンチョウには世界中に愛好家がいて、今現在、カラーバリエーションが続々と生み出されていることも知らない専門外が、実に狭い知識と思い込みで血迷ってしまっただけに思えるが、降りかかった火の粉ではあるので、それを振り払うべく、コキンチョウ愛好家の皆さん、ご健闘を心からお祈りします。
附(つけたり)
 世間的に動物取扱責任者に対して誤解がありそうなので、言っておくが、あれは、動物取扱業を行うひとつの事業所での責任者であって、どこにでも通用する資格のようなものではない。つまり、ペットショップの取扱責任者だから、どこかの催しの責任者にもなれるわけではない。
 あのような短期の展示会において、どのように対処すべきか、私には分からないが、厳密に考えれば、展示にあたっては動物取扱業の登録をして取扱責任者を置かなければならないかと思う。しかし、現実的には無理なので(短期に対応する制度ではない)、地方公共団体の担当部署に相談し、仮に責任者を設定して、その名前の表示義務を果たせばOK、といった程度になるのではないかと思う。
 今回のケースでは、役所に事前に相談しなかったのが(したのか?)、不用意だったと思う(いろんな「専門家」を招き入れたのも無用心かな?)。

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