NHK、皆様から見る権利をお取り上げ


​十姉妹に攻め込まれたオステ​​
 澤瀉屋の猿之助さんが一家心中を図って、親を死なせて自分だけ生き残った際は、明治座の公演に穴を開け、親を死なせただけでも、「それをやっちゃー、おしめぇーよ」と思ったものだ。ところが真相はさらに身勝手なもので、本人の自供するところによれば、心中の動機は彼のスキャンダルにあり、自殺に利用した薬物は彼に処方されたもので、それを彼はわざわざ飲みやすいように加工し、さらには眠ったようになっている両親にビニールをかぶせて息の根を止めようとした、らしい。これは、はっきりと無理心中で、尊属殺人と見なされる可能性が多分にある案件となっていると言えよう。
 死ぬに死ねない責任を負っていた立場を忘れ、本人は天台宗を信仰していると思っているらしいが、およそ仏教らしからぬ「死んで、家族と一緒に新しい世界に生まれ変わる~」などという、高校生がお友だちとお手手つないで電車に飛び込むようなかわいらしい宗教観を開陳されては、もともとおつむが弱かったのではないかと思えてしまう。
 さはさりながら、おつむが弱かろうが精神的に病んでいようが何だろうが、彼が尊属殺人に近い心中、つまり「犯罪」を犯す前の仕事に、何の問題があるだろうか?そのような穢れた人の顔を見たくない、と思う人も少なからずいるはずなので、見ないで済むようにするのは当然だが、NHK、見ないで済む有料配信のリストから、彼が出演した作品を消す理由があるか、しっかりお考えいただきたい。
 いったい、どのような犯罪、もしくは道義的問題を起こせば、過去の作品に類が及ぶのか、万引き?薬物中毒?交通事故?またその程度は?さらには、端役なら無視で、主役ならアウト、主要な役・・・、出演時間の長さで決めるのであろうか?つまり、NHKのお偉いさんの勝手気ままなその場の気分で、見たくない人は見なくて済むオンデマンドのようなものから、作品を消すのは問題ではなかろうか?それは、あたかも、重罪を犯した人の過去の著作を焚書(集めて焼き捨てる)するが如くで、およそ論理的でも民主的でもない。
 と、『鎌倉殿の十三人』をオンデマンドで絶賛観賞中の私は、強く思ったのである。文鳥の世話をしながら見るより聞いていた時にはわからなかったが、実に細部までこだわっていて面白かったのだ(今の家康はこまったものだが・・・)。
 もちろん、森のようなところを枝をかき分け馬が疾走すれば、「足もとはどうなってるのかね?」と思ってしまうわけだが、それは「どうして息ができるのかね?」の火中でのシーンなどと同様で、リアリティはないがお決まりの演出なので、仕方がない。時代考証的にはそれはないだろうと思うことも多いが、舞台装飾も細かく衣装が素晴らしく、昔なつかしの方々を含め役者さんは熱演、宮沢りえさんなどは声まで変えての役作りで、女優さんでは類例がないのではなかろうか。
 のに、配信を中止した。NHKは「皆様」の見る権利を、何の説明もなく、もちろんその判断の基準を明確にすることなく、あからさまに侵害したのである。早急に再考されたい。

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