フラッシュに飛び退くアリ(かなり機敏)
オスが必要、と決心し、仕事を早く片付けて、自転車にまたがり東へ向かった。40分も行けば、東武スカイツリーラインの新田(しんでん)駅に達する。生まれて初めて東武に乗ったのではないかと思うが、特に感慨はなく(ずっと乗っていれば、地下鉄日比谷線経由で東急田園都市線に直通するので、全く知らないわけでもない)、途中、草加で急行に乗り換え北千住へ。スカイツリーを近くで見たいとは少しも思わず、北千住から、「このわっかりにくい乗り継ぎはなんだ!」と、心中叫びつつ、常磐線普通電車=地下鉄千代田線に乗り換え、亀有。
亀有ってーと、『こち亀』の両津勘吉がいて、寅さんの柴又の近くだ。つまり、下町、庶民の街。もっとも、東京の下町は千差万別で、「下町」、と一括りにすれば、いろいろ差し障りも生じるのではなかろうか。しかし、まぁ、共通点は、とにかく人がごちゃごちゃいるので、地方から出てくると面食らう、といったことだろうか。ごちゃごちゃしたところで、譲り合いながら生きねばならないので、人情は細やかになるに決まっているのだが、案外そうしたことに感動する・・・。
そう言えば、大学の同学年のサンダーさん(あだ名)は、亀有在住で、なぜかそれを地方出身者に自慢していた。しかし、当時の私は、亀有と千葉県との境目がよくわからなかったので、その心情を理解してやることができなかった(何かイヤミを言ったはずだが覚えていない)。で、今回、初、亀有。南口を出て、三菱【中略】銀行とマクドナルドの間の商店街を行けば、すぐに鳥の声が聞こえてきた。誘われるように歩を進めれば、左手に小鳥屋さん『長妻商店』が堂々と存在しているのである。
駅前と言えるような立地の小鳥店(正確に言えばペットショップ)、昔は結構見かけたが、今となってはごく希少な存在。・・・
「素晴らしい!亀有。ビバ!亀有。ジーク!亀有。亀有バンザイ!!」
と、口の中でサンダーさんにお詫びしつつ、はっきりとした境のない間口を入って文鳥を・・・、すぐにいた。大きなカゴに有色のヒナ羽毛を残した白文鳥が7、8羽。さらに、ヒナ羽毛残しの桜2羽、成鳥の白1羽、桜1羽、白ペア、桜ペア、白・桜ペアといった感じに散在している。たまたまかもしれないが、白と桜のみとは、潔いではないか。店内は、お世辞にも、清潔感に溢れているわけではないが、小鳥屋さんでは奇跡的レベルで珍しいことに、小松菜が与えられていて、そういった点で、行き届いたものを感じる。
お店自体には、(私の感覚では)問題なし。我が家の白文鳥が1羽だけになっていて、このお店の現状は白の選択肢が多い。そして、この雑居カゴの白文鳥たちは、ヒナ羽毛残しだから、若いのは間違いないところで、手乗り崩れかもしれない。そこで、雑居カゴの文鳥たちを観察した。
1羽だけ赤目がいる。おそらくアルビノの突然変異個体だが、頬に羽のない彼が威張り散らしていて、その横に小柄な1羽がまとわりついている。つまり、この2羽は♂♀ペアで、このカゴを自分たちだけの世界だと認識し、他の文鳥たちをテリトリーの侵略者と見なしているようだ。アルビノは健康上問題が出てしまうケースが多いようだが、彼は、相当な豪傑なのだろう。しかし、神経質なアラシの相手をするには、気が強くてはダメだ。そこで、迫害されているその他大勢に着目した。
文鳥の雌雄は、外見で判断し難いことが多い。しかし、このお店の文鳥たちの系統は、♂♀の特徴が、外見、特にクチバシの太さに現れやすいようで、だいたい判断できる。『赤目』以外の♂?の1羽が、体格が良く、何となく性格も温和そうなので、さえずらないか、黙って観察を続けたところ、果たしてさえずり、それと同時に♀?2羽にはさまれていた。つまり、メスに好かれているが、暴れ者を押しのけるような勇敢さの持ち合わせはない男の子、なのだろう。・・・完璧だ。
と言うわけで、店主らしいお爺さんに、文鳥のオスをください、と言い、白文鳥の中の1羽を指定した。さすがに目利きの店主は、確かにこれはオスだとしつつ、さっさとカゴに手を入れてその捕獲に取り掛かったが、何しろ、複数羽の白文鳥が乱舞するので、どれがどれだかわからなくなった。「どれだ?」と独り言が聞こえた気もするが、後ろで見ている私にもわからない。それでも、あれではないか?と思った個体を捕獲したから、内心、その眼力に大きく感心した。
店主は、その文鳥を例の小さなボール箱に入れているので、勘定をしようと思ったが、値段がわからない。「おいくらでしょうか?」と尋ねると5000円とのことなので、支払い、少し散策してみたい気持ちはあったが、一目散に、元来た道を取って返した。
今回は、自転車での移動距離が長い。こうした場合、自転車の前カゴに文鳥が入った容器を置くのは危険だ。非常に振動があって、ひっくり返るような衝撃にたびたび見舞われてしまうのである。そこで、肩掛けカバンの中に入れたのだが、これは正解だったようだ。ヘトヘトになりながら帰宅し、白文鳥をカゴへ移したが、何の問題もなく無事であった。ただ、お腹が減ったようで、人目を気にせず食べ始めた。なかなか根性がある。
名前は、カメ・・・は、ミシシッピアカミミガメの亀子がいるし、リョウさんは、リオくんとかぶるし、亀有のアリで良いかな。アリ君の今後に期待しよう。
1/160で残像が出るとは、実に機敏だ。『赤目』から逃げて鍛えられたか?
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