ノーマル風味の桜文鳥になりそうなフィン
阪神淡路大震災から20年なのに、さらに並文鳥の話。
まずは、古い飼育書から、並文鳥についての項目を、いくつか拾ってみよう。
・高木一嘉『かわいいブンチョウの飼い方』1978年
「原産地で捕えられた並ブンチョウは、何百羽も箱に入れられ」
・鷲尾絖一郎『ブンチョウの飼い方ふやし方』1980年
「並ブンチョウは、輸入ブンチョウとか、ダメ(駄目)ブンチョウとか呼ばれ」
「白ブンチョウのような高級な鳥に比べて並に落ちるという意味です」
「正しくは野生ブンチョウと呼ぶべきでしょう」
「白ブンチョウのような高級な鳥に比べて並に落ちるという意味です」
「正しくは野生ブンチョウと呼ぶべきでしょう」
・宇田川竜男『やさしい小鳥の飼い方』1987年
「駄ブンチョウなどと呼ばれる原種で」
「貧弱な荒鳥」
「貧弱な荒鳥」
・江角正紀『文鳥の本』1999年
「かつては並文鳥と呼ばれていました」
「かつては並文鳥と呼ばれていました」
並文鳥とは、もともと捕獲され輸入され売られていた野生文鳥のことで、飼い鳥としてはダメで下等なので、並とされていたわけである。しかし、「有識者」の中には、その名称が不適当なものと意識されている方もいて、輸入量の減少もあってか、おそらくは次第に改まり、飼鳥団体の江角さんが、前世紀末に「かつて」と過去の名称として葬り去られるに至っていると見なせよう。こうした事実を踏まえれば、21世紀の今日の文鳥に「並文鳥」を使用する方がおかしいのではなかろうか?
私も、元々は文鳥とはノーマルでしかなかった時代、白文鳥も桜文鳥も存在しないか、少なくとも品種として固定化されていなかった時代の、その文鳥を何と呼ぶか考えた際に、仕方がないので「並文鳥」を用いた(並文鳥にも、輸入したものと日本国内で繁殖したものの別があるとする飼育書も多かった)。しかし、今現在の文鳥愛好者が、今現在日本で健康に生活していて、しかも手乗りの文鳥を、「並文鳥」と表現すれば、やはり違和感しか感じられない。
もしかしたら、並文鳥の「並」は、並盛の並で普通・通常の意味として、英語のノーマルと同じ意味でしかない、といった反論もあるかもしれない。しかし、それは無理筋に過ぎるだろう。「並」は、より上位のものと区別する差別の意味合いを持って使用される言葉であり、並盛にしても、大盛との差別がなければ有り得ない。文鳥に関しては、白文鳥を良として比較的に高額で流通し、桜文鳥を「駄文」などと差別してより安く流通していた1960・1970年代頃の日本の社会を前提として見なければ、何が並なのかわからなくなる。
実際は、既述の引用にも明らかなように、それは差別され差別の結果が「並」となっている。それは、白文鳥→桜文鳥→並文鳥という、白鳥を頂点とする階層(ヒエラルキー!)が厳然と存在していたことを明瞭に示しており、そのような歴史的事実も、文鳥愛好者の中で物知りを目指すような人は、わきまえておくべきかと思う。
実際は、既述の引用にも明らかなように、それは差別され差別の結果が「並」となっている。それは、白文鳥→桜文鳥→並文鳥という、白鳥を頂点とする階層(ヒエラルキー!)が厳然と存在していたことを明瞭に示しており、そのような歴史的事実も、文鳥愛好者の中で物知りを目指すような人は、わきまえておくべきかと思う。
では、ノーマルなら良いのだろうか?この言葉は、2000年頃の私には新鮮なものだったが、問題ないと見なした。最初は「原種」だから「原文鳥」にしたら良いと思ったが、訓読みされる原さんの文鳥になってしまうし、「源文鳥」と勝手に用語を作っても、たぶん一般化しないと思われたのである。また、「オリジナル」など原種を意味する他の英語を用いてもわかりづらくなるばかりで、いっそ「グレー」と色で表現すればシルバーと混同するだろうし、「ダーク(濃い色)」では何に対して濃いのかわからない。
一方、「ノーマル(普通・標準)」なら、色変わりなどの変種の多い他の小鳥の品種名としても用いられており、飼い鳥の品種を示す言葉としては認知されているし、本来の文鳥の姿はこれに近い、とイメージしやすいのではなかろうか?そういった、傍から見ても自分で考えてもどうでも良いことを、つらつら思案すると、ノーマルはふさわしい言葉との結論となった。もちろん、ノーマル以外はアブノーマルなのかとの思いもかすめたが、アブノーマルは用いないので関係あるまい。
と言ったところで、「考えなしに「並文鳥」を使用するなバーロー!」の話はおしまい。「並文鳥」を当然のごとく使用していた人にはショックかもしれないが、この際、こっそり改めていただければと願う。
で、最後に、用語を整理しておこう。お間違いのないように。
で、最後に、用語を整理しておこう。お間違いのないように。
並文鳥
とは、野生の文鳥(Padda oryzivora)を捕獲して販売していた際の商品名。野生の生息数の減少により、1990年代には店頭より消え、21世紀には絶滅を危惧される存在としてレッドブックに記載され、ワシントン条約附属書2に基づき、商業目的での輸出入に際しては、輸出入それぞれの国の許可が必要となっているため、現在は存在しない。
ノーマル文鳥
とは、白文鳥を祖先に持たず、野生の文鳥から代々交配してきた品種のこと。
ノーマル風味の桜文鳥
とは、桜文鳥の色の濃い個体で、ノーマル文鳥と同じ外見の文鳥のこと。加齢に伴い白斑が現れてくるかもしれないスリルが味わえる。
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