都市は自然に抗するもの

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抱卵中でやる気満々なイトはん
 
 広島市の安佐両区には、文鳥を飼育する人がかなり多い印象があるので、私は個人的に心配している。
 この天災に関して、東京新聞の論説「災害が起きる前に情報を」に違和感を覚えた。さて、市域に4、500メートル級以上の山岳を含まない政令指定都市が、どれほどあるだろうか?例えば、同じ中国山地を後背に持つ岡山市や神戸市も、広島市とさほど事情は異ならず、より海沿いの中心地から、徐々に北方の山間地に向けて、住宅地を拡大させている都市ではなかっただろうか。と思えたので、この論理では、日本での居住空間は極端に狭まるように思えたのだ。例えば、この新聞社が社名に冠する東京都も、関東平野には相違ないが、西は立派すぎるほどの山岳地帯であり、人口密集度の高い都市部を西に進んで、八王子市に達すれば、4、500メートル級の山を市域に含み、その周辺に住宅地は多く存在する。
 東京新聞の長谷川幸洋氏のような、尋常ならざる人物は、「山肌が迫った宅地は一見して「危ない」と分かる」そうだが、普通の人間は、裏庭にせまった数メートル、せいぜい十数メートルの崖があれば気にするだろうが、4、500メートル級の山すそに住んでいて、その大きな山が崩れ落ちてくるとは考えないだろう。むしろ高台で見晴らしも風通しも良く、緑の山肌は景観を高めていたはずで、人が好んで住んで不思議はない環境ではなかろうか。何しろ、広島は政令指定都市、人口百万を超える大都市であり、その高台の住宅地が、土砂で一掃されるような事態を想像して生活するだろうか?確かに、百年に一度あるかないかの豪雨の際は、その緑の山肌が崩れ去り、沢に向かってかけ下ってくるその通り道に、自分の住居が立地してしまうことにもなるが、それを事前に想定するなら、そもそもそこに住むはずもなく、また、想定しながら宅地造成をしている方が、よほど問題となってくるだろう。つまり、不動産取引で告知義務などする以前に、そのような場所には住まないし家は建てないはずで、結局、想定外の大規模災害だったと言うしかない。
 異常ではない普通の人間は、裏庭の崖が崩れることは想定できても、4、500メートル級の山肌の全面的土砂崩れなどは、想像していない。想像しないから、そこに住む。行政にしても、そのような事態を想定していれば、宅地開発に慎重にならざるを得ない。それでは、峨々たる脊梁山脈を持ち、平地の少ない我が国において、大都市の人口をどのように収容すれば良いのだろうか?国の発展のため、都市部への集住は必然であり、山間に宅地造成が進むのも当然だとするなら、やはり、想定外を想定内にし、土砂の流水路や流勢の衰減措置を考えた都市計画が必要になるのではないかと思う。
 住民は、そこで日常生活を繰り返しているので、その地理的危険性には、むしろ気づかない。個人に注意を促すなどと簡単に言うが、それでは、雨が降ったら眠れなくなり、生活など出来まい。そもそも、山は危険だと言うなら、川沿いも海沿いもすべて危険であり、そのようなことを言っていたら住む場所など、ほぼ有り得ない。自主避難の徹底だとか、日頃の防災意識の向上だとか、簡単に言うが、都市部は人口が密集しており、その住民をすべて収容できるような施設を、頻繁に用意して提供するなど、ほとんど不可能と思える。また、そもそも、集中豪雨で危険極まりない状況の夜中に、一斉に特定の場所に避難させるなど、むしろ人名に関わる事態を誘発するだけではなかろうか。
 人口密集地域の災害への対処は、過疎地域のそれとは異なる。集住しているからこそ、自然災害から守りやすいのであり、自然災害への防御は、まずハード面の都市計画を第一にしなければなるまい。つまり、基本的には、個々の住宅から避難する必要がないようにするのが、都市に人間を集住させることの前提とするべきだ。したがって、今回のような都市部の大規模災害において、個人の防災意識とか、戦場のサバイバルか、野中の一軒家でのスローライフ同様に、自分の身は自分で守るだとか、そのような発想は、根本的におかしいと、私には思える。
 とは言え、行政は予算との兼ね合いで、大規模な「強靭化」は実行しにくいので、今回の広島市や昨年の大島町などを教訓に、間近に崖があったり、東京新聞の人のように俯瞰して、大きめな山の沢筋に家があるようなら、1階を寝室にするのは避けたり、崖や山の方向に面して、可能な限り頑丈なフェンスを設置するといったことは考えても良いかもしれない。それ以上を個人に求めるなら、海や川沿いの住民は、庭木に救命ボートでもつないどけ、というくらいに無茶な話だろう。
 
 この際、自分の家に起こりうる自然災害を考える機会とは言える。
 ウチは・・・、周囲に山はないので土砂崩れはないだろう。台地の周縁部なので洪水もないだろう。台風や竜巻などの風害は十分あり得るが、これはどうにもしようがない。後は、地震で外環自動車道が倒壊することくらいか。・・・距離的にウチはセーフではないかと。
 しかし、何が起きるかはわからないので、油断しないように気をつけたい。 

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