『美味しんぼ』の鼻血の件、産経新聞の記事を読んだ。
「『因果関係がない』という証明を出せ」などと言われたら、幼児性に呆れるだけではなかろうか?それは、いわゆる無実の証明を求めるという意味の「悪魔の証明」で、知的レベルとしては、子ども同士の口喧嘩での「混ぜっ返し」に等しい。「お前のかあちゃんデベソ」「お前のかーちゃんこそデーベソ」。「お前のかあちゃんデベソ」と言われたら、おうちに帰ってかあちゃんのおへその形状を確認し、出来れば写真に撮って、出べそではない旨を立証するのが、科学のはずである。
低放射線によって鼻血症状が起きるという仮説を立て、それがいかに精緻なものであっても、圧倒的多数に症状が現れない現実があれば、否定されるしかない。「お前のかあちゃんデベソ」と言っても、そのかあちゃんが、昔グラビアモデルか何かで、デベソでないことが、かなりの人間の周知の事実であれば、言われた側が立証する必要はあるまい?その仮説は、現実の前に一瞬で吹き飛んでおり、そもそも論外でしかない。 それでも、もし、その仮説を維持したいのなら、なぜ圧倒的多数に症状が現れないのか、科学的に立証しなければならず、また、ごく一部の人間にのみ、放射線の影響が現れるのであれば、その理由を科学的に説明しなければならない。つまり、グラビアモデル当時の写真や映像には、加工の疑義があると、その疑惑部分を説明しなくては始まらないのである。
ごく一部の人間に鼻血が生じ、その鼻血が放射能のせいだと勝手に思い込み、似非科学なのか科学的知識の乱用なのか、それらしく見える理屈付けをして満足して、「違うと言うなら、違うと証明して見せろ!」などと言ったら、駄々っ子がむずかっているだけになる。挙証責任は、『因果関係がある』とする側のもので、無いとする側は「だってほとんどの人が症状出てないじゃん!」とか、「『鼻血ブー』がその地域ではやってる統計調査でもしてから言えよな~?」とか、まともに相手をしたいとは思えない難癖の段階でしかないことを、理解すべきであろう。
この場合、鼻血症状の頻度や分布、その統計調査の結果と、放射線量の多寡の分布に、因果関係が認められて、初めて科学的な仮説に成り得るかと思う。何ら客観的裏付けもなく、鼻血症状が増えている、などと主観的なだけの印象を言われても、遺憾ながら、説得力はゼロに等しいのである。
さて、せっかく、この津田教授に限らず、非科学的な個人の思い込みに寛大な、教授様の肩書きを持つ人もいるのだから、そういった方々の協力も仰ぎつつ、(どんどんオカルトになるだけのような気もするが)科学的な批判に耐えるような低放射線鼻血現象のエビデンスを、しっかり調査するのこそが、このご立派なご長寿マンガの掲載誌の発行元で、長らく小学生の学年別総合雑誌を手がけ、日本の子どもに科学的知識を啓蒙してきた、あの、その名も小学館、のやるべき仕事だと、私は思う。
つまり、小学生向けの出版物を扱う企業理念を想起し、日本全国の小学生の諸君に協力してもらって、ご家庭内鼻血調査を大々的に実施すれば良いのである。良い子のおぼっちゃんもおじょうちゃんもみんな嬉々として、おとーさんおかーさんじーちゃんばーちゃん、さらに近所のおっちゃんおばちゃんその他もろもろに、手当たり次第に聞き取り調査してくれるだろう。今からなら、夏休みの自由研究にも、十分すぎるほどの余裕があるではないか?わけのわからぬ遁辞で終わらせず、ご検討頂きたいものである。
もちろん、学級新聞に載せるようなそれが、科学的な統計調査と言えるかは微妙なところだが、少なくとも、食いもんのことばかり考えている年寄り個人の取材を元にした独善マンガを垂れ流すよりは、よほど拝読に値する内容となるはずである。がんばれ、小学館!!
コメント