温水浴びをするニチィとアト
クチバシの模様が素敵なアラちゃん
ニチィとアトは夫婦なのだが、相変わらず姫と従者の関係でもある。例えば、アトが水浴びをしていると、ニチィが蹴飛ばすようにして押しのけ、押しのけられたらやり返すのが文鳥の夫婦の姿のはずだが、アトにはそれができず、周りをウロウロして、他の文鳥が接近するのを防ぐだけだ。
浮気だけは平然とするが、ニチィは嫉妬しない。絶対に夫としてみていないと思う。この状態が、『男』として良いのか悪いのか、何とも判断に迷うところだ。
さて、アラ。お情けで1、2度食べてくれるだけになった。認定ひとりエサ状態である。そこで、連日つついてきた成長度に応じて差し餌回数を減らすとする飼育方法の問題性を、まとめておくことにする。
例えば、昔存在したアニファという雑誌が編集した飼育マニュアル本『文鳥』(改訂版2006年)では、差し餌回数として、生後2~3週間は6回、3~4週間は5回、4~5週間は3回、5~6週間は2回、と、成長に応じて回数を減らすように、図入りで掲載している。
これを実践しても、おそらくほとんどのヒナは育つ。しかし、それは許容範囲であるというだけで、市販のアワ玉にお湯に浸しただけのエサでも、ほとんどはひとりエサまで生きながらえるのと、さして変わりはないと、私は判断している。ペットショップの「アワ玉マンマ」にしても、客観的に栄養の内容を考えれば、不足する栄養分が多く不適切なエサだが、、ほとんど問題が起きないので、それが正しいと信じこんで、飼育初心者の客に対して正しい飼育方法として吹聴していたが、それと大して変わらないのではなかろうか?
そもそも、いったいどこの世界に、成長に応じて巣の中のヒナへの給餌回数を減らす親鳥がいるだろうか?おそらくこの特異な飼育方法を考え出して実践し、吹聴までする自信家の方々は、ひとりエサになる時期を孵化40日目頃と設定し、それに合わせて徐々に「自然に」移行させるベストな方法と信じていることだろう。しかし、それは、『円滑にひとりエサにするためにはどうしたら良いのか?』、というたった一つの課題にこだわる余り、本来の命題であるはずの『円滑に手乗り文鳥として成長させるにはどうしたら良いか?』に反してしまうことに、残念ながら気づかれなかったのではなかろうか。
※アワ玉だけの湯漬け餌だけの場合、まず間違いなく脚弱症を発症するリスクが高まる。カルシウムが少なければ骨軟化、ビタミンBが少なければくる病になる可能性が増大するが、そのエサは、どちらも不足しているのである。
ヒナに差し餌をする飼い主の目標は、健康に生活する成鳥のはずだ。ではその目標である成鳥たちは、どのような生活をしているだろうか?朝晩の2回しか食べないような生活はしていないではないか。
彼ら文鳥は、起きていれば、いつでもエサを食べていると言って良い生き物だ。なぜか。彼らの主食が総じてエネルギー量が乏しく、飛び回る必要性から軽量化が求められ、ために脂肪に変えて体内蓄積もできず、やはり飛び回る必要性から、エサを貯めるそのうもヒナの頃より収縮してしまっているからだ。彼らの身体構造は、生きるために、間を置かず食べ続けねばならないように出来ていることを、しっかりと認識しなければなるまい。
その事実を踏まえれば、ヒナ用の容器に閉じ込め、成長するに従いそのうが収縮してきているヒナに対し、差し餌の回数を減らすのが、どれほど文鳥という生き物に対して、不自然なことを強いるのか理解されよう。つまり、ひとりエサにするために必要なことと勝手に信じて、親鳥は行わないような絶食をヒナに強い、慢性的な飢餓感から自立を促すことにはなっても、身体の健全な成長を阻害し、飼い主とその人の文鳥を疎遠にもしかねない、それが差し餌回数を漸減させる方法論である。
動き回れば腹が減る。一方、飢餓状態では動かないし過ぎれば動けない。本来動き回るべき孵化5~6週間目のヒナに対し、差し餌の回数を2回などと極端に減らせば、積極的な個性のヒナの自立は促進出来ても、消極的なヒナを不活性にし自立を阻害する危険性が生じる。回数を減らせば、どのようなヒナもすべて機械的に自立するなど、甘い考えでしかない。兄弟姉妹やお店の同僚ヒナから離され、飼い主とマンツーマン状態となった消極的な性質のヒナが、差し餌回数を減らされたらどうなるか、こういった飼育方法論を吹聴する飼育のベテランなりプロを自称するような方々は、考えたことがおありだろうか?じっとして動かず、エネルギーの消費を最小に止め、ひたすら差し餌を待つのである。もちろん、そのようなヒナは、複数飼育の我が家では見たことがないが、会社員が朝晩の2回差し餌をし、その間、家で留守番をしているようなケースで、なかなかひとりエサにならないことが、たびたびしばしば見られることは、よく承知しているところだ。
動き回って遊び、お腹が飛べるようになる以前より減るから、ヒナは自立しなければならなくなる。従って、従って、如何にお腹が減るように元気一杯遊ばせるかこそが、飼い主が気をつけるべき点と言える。ところが、浅薄な飼育本の記載に惑わされ、5~6週間目だから、会社への出勤前後の2回で良いと考え、留守中はケースに入れて暗室に置いてしまい、そうしながら「生後3週間たった頃から巣の中にアワ玉などをまいて、クチバシでついばむ練習をさせます」(前掲書)などと言う戯言(孵化3週間でもモノをかじることすら出来ない。それは人間の乳飲み子の横におにぎりを置くくらいマヌケな行動)を、実践するような人の話は、枚挙にいと間がなかったくらいだ。
もし、真っ当な会社員が、孵化5~6週間目のヒナと暮らすようになったなら、自分で食べられるように、成鳥と同じような環境を用意し、当然ながら、自分で食べられない場合のエネルギーロスを防ぐため、巣を設置し、保温にも留意しなければならない。「差し餌の回数が少なくて済む」から、それまでよりも楽などという状態は、本来有り得ないことを認識すべきである。それは、ヒナに絶食を強い、自分で食べられるようになるか、じっとして飢餓を耐えるか、その選択を強制しているに過ぎない。そして、その飢餓状態は、病気を招く大きな要因になることにも、十分留意すべきであろう。
文鳥の孵化5~6週間目は、巣立ち後に親鳥と行動を共にしながらいろいろと学ばねばならない時期であり、実は最も飼い主とのコミュニケーションが必要とされている時期だ。その点をしっかり認識し、朝は30分早起き、就業時間が終われば寄り道せずに帰り、る。この時期こそ、多感な文鳥に学習させることを意識して遊ばねばならない(指でエサをつつくのも遊び)。
1羽飼育であれば、親鳥の代わりに教えられる唯一の存在は飼い主なのだから、円滑な成長を願うのであれば、親鳥としての務めを果たさなければならない。もしそれが不可能なら、ひとりエサまで引き取らないのが正解だと、私は思う。くれぐれも、孵化5~6週間目になれば手がかからない、などと誤解のないようにお願いしたい。
さて、私にとっての課題は、あくまでも『1日でも長く差し餌をするにはどうしたら良いのか?』である。しかし、これにも結論が出ている。《空腹感を感じたらすぐに給餌する》で良いはずだ。自然界でも、エサの豊富な環境ではヒナの自立が遅れるとの事例報告があり(何を読んだのか出典失念)、それ以上に、ヒナの自立心を促進してしまう空腹感を無くしてしまえば、自立を遅らせることができるのは自明のように思える。
ところがそのためには、《カゴからずっと出して一緒に遊び、少なくとも数十分おきに差し餌を勧める》必要がある。しかし、その実行は、私には時間的に不可能で、もし行ったとしても、別の飼育上の問題が生じてしまう。何かといえば、室内での放し飼いが前提となるので、危険なばかりか(人間は長時間注意力を持続できる生き物はいない。まして私ときたら、、)、カゴでの生活が身につかないのである。
もし、『1日でも長く差し餌をするにはどうしたら良いのか?』という課題だけを満たそうと思えば、差し餌回数はそれまでと変えないまでも、カゴの中にエサを一切置かず、ヒナと一緒に遊ぶ際も、エサを指でつついて遊ぶようなことをしなければ良いはずだ(もちろん、他の文鳥たちの姿など見せてはならぬ)。しかし、それはヒナの成長を故意に阻害する行為で、やはり不自然と言わねばならない。
止むなく、それ以前の差し餌時間を変えずに続け、エサでも遊び、カゴの中ではおとなの文鳥たちと同じようにエサを設置している。結果、数時間も存在する差し餌の間、おとなしくしているはずのないヒナは、ツボ巣を破壊するなり、ブランコ乗りを習得するなり、いろいろエサをつついて遊ぶなどして、空腹感を募らせ、差し餌を待たず、ごく自然に、自分でエサを食べるようになってしまう。
そして、今回のアラも、無事にひとりエサ状態になってしまった。残念無念だ!と喜びたい。
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