パンくずが好きなキンカチョウとその他
パンの味を覚えさせたくなかったのだが、我が家には愚かな年寄りがいて、自分が食べ残したパンを小鳥に食べさせようとして、鳥カゴにねじ込んだりしたため、キンカチョウのコロコロはそれを好むようになってしまった。
私は、後述のようにパンはほぼ無害と結論付けているのだが、人間の口の中は雑菌が多く、かじったものなど与えてはならない、と思っているので、先手を打ってパンの端っこをパンくず状にして、昼の放鳥時に提供することにしている。そのため、現在、パンを食べる小鳥が増えつつあり(キンカチョウがやたらと好むが、文鳥はあまり食べない)、パンくずを忘れると、普段は近づきもしないコロコロが水仕事をしている正面にやって来て「パンがないんですけど・・・」と目で訴えるのを目の当たりにすることになる。
「パンなど与えたらダメ、とじいちゃんが言ってた!」
と言われるかもしれない。もちろん、それは承知している。それどころか、そのじいちゃんが獣医さんで、尊敬する小鳥医療の泰斗(高橋達志郎先生)を含むことさえ、承知の上である。そのご意見に、私も異存はないが、理屈もなく「ならぬものはならぬ」などと結論を押し付けられる気など無いので、それは一般論であって、文鳥などの雑食性がある小鳥なら、与えても大して害など無いと、自分で考えて結論に達している。
他人に薦めはしないが、それを止めるほどの明確な科学的根拠などないので、短時間におやつ程度与える分には、問題視するほどのことではなく、それにこだわる方が、案外非科学的な迷信にとらわれ、教条的に繰り返すだけだと思っているのである。
もちろん、パンばかり食べれば、それは加工されて軟らかいため、そのうに癒着してそのう炎につながるようなことは有り得るかと思うので、与える量の加減くらい、飼い主が考えるべきだろうが、そのようなことは、主治医でもないのに他人が心配してやる必要はあるまい。人の子どもに甘いお菓子ばかり与えれば肥満して不健康になるのと同じである。
反対意見はいろいろで錯綜している。
鳥に加工食品を与えるべきではないと大げさに主張する同じ人物が、立派な加工食品であるペレット食を推奨したりするのは、笑い話に近くなってしまう。さらに、笑い話にならないように、パンとペレットの違いを挙げて正当性を保とうとすると、訳のわからない変なことにもなりかねない。例えば、パンには膨らませるための酵母があって毒になるとか、そもそも栄養がないので満腹になっても餓死する、などなどである。
冷静に考えて、栄養がないわけがない。人はそれを主食として食べているのである。ただ、パンから得られるのはエネルギーとビタミンの一部なので、それだけでは偏りが生じるだけの話だ。
鳥に食べさせるパン、それもパンくずで言えば、それはパン全体の中でも栄養素を多く含んでいる。一万円札の福沢諭吉は、慶応の塾生たちに、パンの耳が滋養豊かで残してはもったいない旨力説したらしいが、抗酸化作用のあるプロニルジリンはパンの耳に多く含まれるという今風の科学的知見もあるのだが、承知の上でのご主張か伺いたいものである。
もちろん、膨らませるためにパン生地に練りこむ酵母のイースト菌は、当然ながら、焼く際の高熱で完璧におなくなりになるので、そのようなものを気にするのは非科学でしかない。また、塩分その他を含むこともあるが、多少摂取した方が良いレベルである(真っ当な飼育をしている飼鳥には塩分の給源がない)。
つまり、他の副食になるようなものを食べる余地があるなら、スズメや文鳥の類(雑食性がある生き物)にパンくずを与えても、目くじらを立てるほどのことは無い、との結論に達する。もちろん、与えずに済むならその方が無難だが、子どもに甘いお菓子を与えるくらいの感覚でいれば健康問題にはなりがたいのである。
従って、私は虫のように小さなコロコロの催促に逆らえないのである。
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