真夏の日光浴推奨は不見識2

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果汁に群がる文鳥たち

 昨日に比較すれば、湿度が低いようで、多少の風もあり、絶望的な不快はなかったが、午後から雷雨となった。なかなか盛大にカミナリが鳴っており、文鳥たちも不思議がっていた。

 昨日、夏の屋外で文鳥に日光浴をさせるのは、愚の骨頂であり、それを薦める者は、すべて飼育について不見識、と勢いで書いた。あれだけでは無責任な気がするので、補足しておきたい。
 まず、紫外線により、皮膚のコレステロール(プロビタミンD)がD3に変容して、体内吸収される。鳥類の場合は、羽繕いによって羽毛の表面に広げられた尾脂腺からの油脂が、紫外線を受けてビタミンDに変容し、それを羽繕いすることで、経口摂取しているとも言われているようだが、羽毛に隠れていない脚やクチバシでも合成が行われているはずである。つまり、ビタミンDは日光浴によって合成され、このビタミンD3は骨の形成のみならず、健康の維持に有効な働きがあると考えられている。
 しかしながら、それが飼育上必要であるかは、季節による紫外線量の変化や、他の摂取方法の可能性や、屋外で実施した先人たちの失敗例から、考慮しなければならない。メリットがデメリットを上回るか否かである。
 紫外線についての私の大雑把な認識としては、日本では、夏に冬より2倍近くの紫外線が降り注ぎ、木陰でも反射作用によって日向の半分程度の紫外線を受けるが、ガラス越しでは、ほとんど影響を受けずに済む、である(気象庁のお勉強ページ)。従って、夏の木陰では冬の日向と同程度の紫外線量を浴びることになるので、ビタミンD3に関する限り、夏に直射日光を求める必然性がない、という結論になる。そもそも、人間でも夏の陽を浴びれば肌が黒くなるが、これは紫外線を肌に浸透しにくくする、つまり、ビタミンD3生成の効率を下げていることにもなっている(白いほうが浸透する。白人は一般的に有色人種よりも肌が弱く、皮膚がんを起こしやすいとされる)。そのような防御が必要なほど、夏の紫外線は過剰なのである。
 夏の過剰な紫外線の下では、木陰に準じて、直射日光の当たらない開けた窓際にカゴを置く程度で十分と考えられる。では、日光浴を薦める人たちは、冬にどうするべきだと推奨してくれるのだろうか?文鳥の繁殖期は、紫外線の弱まった季節で、特に産卵するメスは、多くのビタミンD3を必要とすると考えられる。真冬の産卵期に、ビタミンD3のために、寒風の中にカゴを持ち出せとするのであろうか?繁殖期間中のカゴの移動が、禁忌であることくらい認識を持たなければ、「有識者」とは言えまい。
 ビタミンD3は、健康維持におそらくは重要な意味を持つ存在だが、動物性の食品から経口摂取出来るので、日光を求めてさまよう必要は無い。昔は、アワ玉程度しか与えなかったが、文鳥は雑食性を持っているので、家庭なら煮干しくらい与えても効果的なはずだ。まして、大昔には存在しなかった鳥用のビタミン剤も、すでに数十年前から普及しており、不足を感じるなら利用するのみかと思う。
 飼い主の失敗として多いのは、屋外での日光浴の際に起きる事故である。飼い主の不注意でカゴを落とすなどして、文鳥を迷子にしてしまったり、ネコやカラスやヘビなどに襲われたり、炎天や寒天に放置して死に追いやったり、屋外での日光浴などしなければ起きなかったものが実に多い。その危険を冒して得るのは、窓辺に置く程度でも十分であったり、経口摂取で補えるビタミンでは、まったく割に合わない。
 もちろん、太陽の光には、朝日を感じることで季節的変化に順応しやすくなるといった利点もあり、また、今現在人間が考える以外にも、重要な要素はあるかもしれない。しかし、日長変化は日光浴とは無関係であり、まして「かもしれない」で、確実にリスクが生じることをすべきではあるまい。何とはなしの迷信で、文鳥を危険にさらすのは避けていただきたい。

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