近くて遠い小鳥専門病院

 昨年越してきたウチの近くに、小鳥専門を称する病院の「本院」があるのは、その病院の分院が池袋に出来る前から知っています(もともと犬・猫・鳥の病院)。その気になれば歩いて行ける距離で、本来なら、やたらとたくさんの文鳥と暮らす私にとって、心強い存在になってくれるはずです。しかし、残念ながら私の脳内動物病院リストから抹消されており、近くても遠い、むしろ無いのと同じ扱いになっています。なぜ、貴重な小鳥専門病院の存在を抹消したかと言えば、そこに通われた人の体験談から、大いに違和感を感じていたからです。
 そのように存在を意識していなかったためか、引越し後遺症と猛暑で心身ともにくたびれ果てていた時期のことだからなのか、昨日ひょんなことから記事を発見するまで、院長の池谷氏の舌禍事件を知りませんでした。それは、原発事故についての常軌を逸した発言だったわけですが、その内容は引用するのもおぞましいので、福島民報の記事などでご確認ください(2012年8月30日福島民報記事9月17日産経新聞コラム)。

 今現在、あくまでも私個人の脳内リストに存在しないにしても、それは初めからそうだったわけでもありません。パソコンでインターネットを始めた当初(20世紀末)から、小鳥の治療技術に優れた獣医さんを探しており、それに該当しそうな人の動向には注目していたのです。従って、池谷氏が、自分で結成された生態何ちゃら言う協会の会長をなさっていて、あの鳩山由紀夫・邦夫ご兄弟たちの主催される鳩山友愛塾』で頻繁にご講義をされていることまで、実は以前より知っています。そのため、今回の件を知った時には、本来小鳥の臨床医であるはずの池谷氏が、貴重な時間を割いて、地方議員諸氏に対してせっせと講義しなければならない理由は、ようするに民主党系の政治家をますますおバカにしてしまう壮大な陰謀ではないかと、二大政党制を確立したいと願っていた一有権者は、疑ることになりました。・・・すると、その遠謀の主は、あのお兄様。その背後でさらに糸を引くのは・・・、やはり宇宙人でしょうね?
 それにしても、何ですかこれは。この話題だけでも、他の池谷氏による講義内容の質の低さは推して知るべしという感じです。この爺様(「じっつぁま」と読んでください)の講義の影響を受けているなら、自民党を出たり入ったりしている「ナチュラリスト」の弟さんの「環境革命」(その何とか塾のサイトでご確認ください)と言うのも、底浅い噴飯物ではないかと疑われてしまうものと、老婆心ながら心配してしまいます(「死神」呼ばわりされながらも、死刑執行という法務大臣としての当然の職務を果たした邦夫氏は、私は偉かったと思っています。なお、この舌禍事件のあった昨年夏の段階では、お兄様の由紀夫氏は、まだ民主党のオーナー気取りの重鎮として存在していた点に留意すべきでしょう)。

 池谷氏の無知蒙昧のデタラメ発言については、見識のある方々から、お怒りの声が多数あがっているので(事の経過が良くわかる「信夫山ネコ」さんのブログ。まったく同感な「コジロー」さんのブログ)、今さら私がおっとり刀で指弾するまでもありませんが、せっかくなので一点指摘しておきます。
 この爺様の脳内ではチェルノブイリ周辺の野生動植物に、奇形がいっぱい存在していることになっているようですが(いつの話なのでしょう?)、市井の無責任な与太話としてなら耳にしても、科学的な話としては聞いたことがありません。そもそも、おかしいと思った地域があってそこでおかしなものを探せばおかしなものも出てくるものです。そして、大抵は、おかしくないと思われる場所でも、同じように調べれば同じようにおかしなものが出てきます。例えば、私が少しは知っている学問分野の、日本中世の考古学でも、新たな発見があると、他の遺跡からも同じようなものが続々と発見されます。これは、それまで気づかなかったものの価値に気づき、それを探そうとした結果です。当然、「発見」される前に発掘調査された遺跡にも、それがあったはずですが、価値に気づかずに、下手すれば、たんなる石ころなり木片などとして捨てられていたわけです。
 生物の形体異常・奇形・変異個体はそれなりの頻度でどこでも存在するもので、チェルノブイリ周辺でも探せば見つかるに決まっており(「チェルノブイリ周辺」と言ってますが、広~~いですよ。当時の汚染度合いはいろいろですし)、それを特殊とするには、通常の地域との有為な相違が見られるか、科学的にサンプリング調査をしなければなりません。もちろん、変異個体の発生率が高かったとしても(って、だからいつの話なのでしょう?)、その原因は何か、いくつも可能性を考えて、それぞれの中で合理性のあるものは何か検証しなければなりません。そのような学問的常識もわきまえない科学的知識に乏しい物好きの爺様が(「生態系」の専門家のはずなので不思議です。私の考える科学的認識が不可欠な生態系とは違うのかもしれません)、「行ったら奇形がおってびっくりじゃったぁ~」、と言っても、「そんなもん川口前川観音通りの公園にもいるのに気づかないだけじゃん?」、と言い返されたら、ほぼそれで仕舞いです。つまり、チェルノブイリなど行かず、近所の散策でもした方が、よほど生態系の真実を発見できるかも知れないわけですね。足元から見ていきたいものです(街中の小さな公園で奇形植物が見つかれば、頻度としてびっくりですが、「チェルノブイリ周辺」よりはるかに狭い川口市全域までいかずとも、荒川の土手でもうろつけば、実例の1つや2つ見つけられるでしょう。ただ、見つけ出せるほど、植物や昆虫への知識があるかは知りませんが)。

 小鳥の専門病院は貴重で、疑いもなく、池谷氏の病院に通われている飼い主もいるはずです。その場合、人格と医療技術は別ですから、この件を気にすることはないと思います。しかし、もし疑いを抱いている点があるなら、この機会に、いろいろ考えてみても良いかと思います(それをそうするのには、理由があるはずです。自分の文鳥のために、人としての美学に反しても、いろいろ勘ぐるべきでしょう。例えば、何ちゃら協会を維持して政治家とコネクションを築くには何が必要か。都心の一等地で24時間営業するにはどれほどの維持費が必要になるか。それを小鳥の診療から得るためには、どのようにしなければならないのか。翻って、小鳥の治療の多くは原始的なレベルにある中、高度な医療機器が病院側の運営面ではなく、純粋に治療面でどれほどの意味があるのか。あったとして、それを有効活用するだけのスキルがその獣医さんにあるのか、といったことをです。画像がきれいに撮れても、画像診断できなければ意味がないでしょう?)。
 私は、政治的な動きなどする暇もなく、臨床医療に一生懸命励んでくれる獣医さんを尊重します。小鳥だけで収益を上げるのは難しいでしょうから、病院が専門であるか否かには問題にしません。小鳥治療の専門性が高い獣医さんで、いろいろ思い込みの独り善がりや知識の上滑りが感じられても、まだしも改善される余地があると期待します(治療と無関係なくだらぬ能書きは聞き流す。もちろんネット上では客観的に批判すべきは批判し尽くすのみ)。
 何を優先させるかはそれぞれですが、それだけに、それぞれでしっかり考えないといけないと思います。で、とりあえず、近くて遠い小鳥の病院は、やはり私の脳内からは永久抹消です。

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