【メールのごく一部引用】
それぞれの種類のシード一粒に対しての栄養成分の把握が出来ていなければシード全体に対しての栄養成分を把握することは不可能です。
すなわち、毎日与えているシードの栄養成分はバラバラであり文鳥がどれ程の栄養を摂取しているのかは分からないのです。
しかも、文鳥が一日に必要な栄養って何がどのくらい必要なのか比較対象から算出したものではなく科学的根拠のあるバックデータが存在しないのではどうしようもないと思うんです。
確かに自然の産物は、同じ種類でも、産地や収穫の季節、その年の気候、その他もろもろの条件で、栄養成分は一定になりません。例えば、文鳥が偏食をするかしないか以前に、そのカナリアシードの栄養成分の組成が、前のパッケージと同じとは限らないのです。おっしゃる通りなわけです。では、考えてみましょう。そういった不確かな自然の産物を原料としているペレットの栄養素が、一定で有り得るか否か、をです。もし、無添加であれば、一定にするのは絶望的だと、気づきませんか?
添加物でいちいち成分調整をしないハリソン社の製造ポリシーでは、細かな栄養分データを掲げるのは不可能でしょう(当初は深く考えず、細かな栄養成分を明示していましたが、おそらく製造するごとに違ってしまうことに気付き、明示できなくなったものと推量している)。原材料が自然の農産物である以上、栄養価は変動しているからです。結果、たまたま、ある栄養素が過剰気味だったロットを与え続ければ、ストレートに過剰になり続けてしまいますし、逆に不足気味だったら、それを食べる文鳥は不足気味ともなりかねません。その程度は許容範囲と理解しなければ、無添加の人工飼料の製品化など有り得ないのです。つまり、人工的な栄養成分調整よりも、オーガニックや無添加と言ったことを重視する利用者なら、細かな成分表示を求める方がおかしいのです。自然の産物は均一均質ではないのが本質なので、それを優先する限り、細かな栄養成分の変動など問えるはずがないのです。
それでも、ハリソン社は、タンパク質と脂肪については表示しています(グーグルの翻訳にリンクしてみたコチラ)。『ADULT LIFETIME SUPER FINE』で、タンパク質14%以上、脂肪6%以上、となっています。それ未満にはならないようにしているわけですが、これは、原料の比率を微妙に調整している可能性を示しています。他の食べ物については、栄養成分がわからないとか原料比率がわからないとか指摘したがる人は、このペレットについても大いにご不満だろうと思うのですが、案外推奨しているらしいのは、私には理解できないのですが、その点はご納得いただけるでしょうか?
すでに、お気づきとは思いますが、自然の農産物そのものである配合飼料を批判する論点は、すべて無添加ペレットに帰ってきてしまい、むしろ一層矛盾が深刻になってしまいます。「科学的根拠のあるバックデータが存在しない」としたら、それでどうして人工飼料など作れるでしょうか?経験的にこれが理想的だと、ハリソンさんなりメーカー側が信じている数値があるからこそ、それに合わせて成分を調整しているはずです。
配合飼料なら、たまたま1種類の穀物に普通よりも栄養的に劣るものがあっても、他で補える可能性があります。多様な品目を食べる利点は、リスクが分散する点にもあるわけです。ところが、ペレットでは、相互補完は出来ません。さらに、原材料比率が変化すれば、味も変わってくるはずなので、新しく開封したら、食欲が目立って落ちるような現象が生じる可能性があります。
どのように変質していようと文鳥はその一種類を食べねばならず、飼い主にとっては中身の栄養成分も原料組成も分からず、変化を極力抑えるようにメーカーが努力していることを、信じて与えるしかありません。そのように信じて与え続けても、メーカーの都合による製造中止などにより、入手で出来なくなる事態も起こりえます(実例あり)。一種類のペレットのみに慣れていると、そう言った際にかなり面倒なことにもなります。
ペレットには、そういった側面があることを、飼い主は認識しておきたいところです。是非とも、専門であろうが似非専門家であろうが素人の物好きであろうが、その主張する内容を自分で調べることもせずに鵜呑みにせず、文鳥のためにも、自分の知性を発揮して検討して頂きたいものです。
さて、「同じペレットでも違います!」とおっしゃる方が10年前から存在するハリソン社の製品ですが、実際には「生後6ヶ月まではHIGH POTENCY SUPER FINE。その後はADULT LIFETIME SUPER FINEというのが一般的な使い方」なのだそうです。そこで『HIGH POTENCY SUPER FINE』を、メーカーサイトで確認すると、タンパク質を20%以上、脂質を12%以上含んでいるのことがわかります。成長段階なので高栄養食にするのだとは思いますが、この数値は、配合飼料を主食とした場合、ほとんど実現不可能な数値です。このような栄養組成が文鳥に必要になるものか、どういったエビデンスに基づいてのご判断なのか、ご教示いただきたいものです。
※アメリカ合衆国で文鳥を飼育する人は極めて稀なので、ハリソン社がそれを対象に商品を開発するはずはありません。フィンチではカナリア程度かと思いますが、カナリアの飼料は、伝統的にも油脂分の多いニガーシードなどを多く配合し、高カロリーにする傾向があります。実際、対象鳥種をフィンチ、カナリア、小型インコのセキセイから中型インコのオカメまで、すべてOK!OK!といった製品です。文鳥用の配合飼料でオカメインコを育てる人はまずいないでしょうし、その逆もあり得ません。配合内容はまるで別物です。どちらが、繊細な配慮がなされていると思われますか?
文鳥の飼料として用いられるヒエ・アワ・キビ・カナリアシード・玄米(青米)といった穀物は、タンパク質含有率6.8~13.7%、脂肪含有率2.7~4.8%に過ぎません(飼料会社の近喜商事のパッケージにある数値に拠る。おそらく同社が独自に調べたデータかと思われ、後述するように、文部科学省の『日本食品標準成分表2010』の数値はより控えめ)。同じ量を食べると仮定すれば、『HIGH POTENCY SUPER FINE』は、一般的な文鳥の飼料に対し、かなり高カロリーになるのは明らかです。そして、成鳥になってからの通常食とされる『ADULT LIFETIME SUPER FINE』にしても、タンパク質を14%以上、脂質を6%以上も含んでおり、文鳥の飼料としては、やはり高カロリーと見なす以外にないでしょう。カロリーだけで判断するのは危険ですが、食べる量の制限なしに、これに文鳥の肥満防止の意味でのダイエット効果を期待するのは、少なくとも科学的ではありません。
なお、カロリーとは、大まかには三大栄養素の脂肪1g=9kcal、タンパク質1g=4kcal、炭水化物1g=4kcalとして計算したものです。脂肪の係数が他の2倍以上になっているので、通常は、脂肪を多く含めば含むほど高カロリーになります。文鳥の食べる穀類に関しては、総じてペレットよりも低脂肪ですから、「シードは高カロリー」などと非科学的な主張を繰り返すような、些細なカロリーの違いにも敏感な人は、ペレットのみを与えればもっとも肥満になりやすく、玄米(青米)の配合を増やすのが、低カロリー化の方策として正しいと、「カロリー!カロリー!!」と知りもせずに見当はずれな行動をとらずに、科学的な事実に則した認識に改めて欲しいものです。
参考までに、文部科学省の食品成分データベースで検索できる穀類や種子(呼び方が違う点に注意。そもそも「シード」などと一括するのは誤解の元)の栄養成分をタンパク質・脂肪・炭水化物の順に挙げ、かっこ内に飼料会社の近喜商事のパッケージにある栄養成分を示し、アトウォーター係数で簡便なカロリー計算を行ないました(少数点以下四捨五入。『日本食品標準成分表2010』はより細かく係数を品目別に設定して行うので、少々数値が異なる。しかし、簡便計算でも例えば玄米は346.7なので、誤差は小さい)。
ヒエ 9.7(9.3)%・3.7(4.8)%・72.4(69.6)%・カロリー367(359)kcal
アワ 10.5(9.9)%・2.7(3.8)%・73.1(70.4)%・364(355)kcal
キビ 10.6((2.7)%・1.7(3.8)%・73.1(66.2)%・356(350)kcal
カナリアシード (13.7%)・(3.5%)・(58.5%)・(320kcal)
玄米 6.8%・2.7%・73.8%・350kcal
ニガーシード (19.4%)・(43.2%)・(26.9%)・(574kcal)
ヒマワリ (7.8%)・(21.0%)・(57.0%)・(448kcal)
麻の実 27.1(29.5)%・25.6(27.6)%・27.6(31.3)%・463(449)kcal
低カロリーになると信じて、カナリアシードを与えるのを控えたり、ハリソン社のペレットを試みる飼い主もいますが、上の数値を信じれば、真逆、わざわざより高カロリーに向かって行動していることになってしまいます。
ペレットのカロリーがわからないではないかと言われそうですが、そのように思うこと自体が、これまでの議論をまるで理解していないことの証明です。メーカーが炭水化物の含有量を明示していないので、計算できないだけです。そして、メーカーが表示できない理由も、前述のように、おそらく原料比率の調節による成分調整が必要だからだと類推できます。タンパク質と脂肪をメーカーの保証数値に保つには、それぞれを多く含む原料を調節する必要があり、炭水化物に関しては、そのしわ寄せでかなり大きく増減せざるを得ないのでしょう。
それでも類推するなら、小麦粉で出来た乾燥パン粉が質的にも栄養分組成でも似ているように思えるので、その値(14.6%・6.8%・63.4%)からペレットのタンパク質と脂肪の値(14+6)を差し引けば、炭水化物の含有量を64.8%と推測できそうです。それを元にカロリー計算すれば、369kcalになります。
『ペレットの方が高カロリー』などと言うけれど、微差ではないか、と思われるでしょう?その通りで、私も初めからそう思っています。もともとひと桁の微量しか含まない脂肪分の数パーセントの違いなど、カロリーの値に大して影響するわけがないのです。しかし、それでも『ペレットの方が高カロリー』は紛れもない事実ですから、カロリーなど大して違わないにもかかわらず、大きく違うように錯覚するばかりか、より少ない方を過剰と言い募って「カロリー!カロリー!!」と調べも考えもせずに連呼するより、よほど正確ではないでしょうか?
さらに(下)へつづく
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