『文鳥様と私』雑感

 忙しいほど余計なことをして時間をつぶしたくなる。これを逃避行動という・・・はず。
 今市子さんのマンガ『文鳥様と私』、最近13巻が刊行されたので、買っていなかった12巻と続けて見ていた。
 で、感想を思いつくまま書きとどめる。

 今市子さんは、ご自分の文鳥の行動に対し、「三歩で忘れる鳥頭」といった評言をされるが、これは鳥類全体に対して喧嘩を売ることになる。カラスなど、人間に対して「アホ~、アホ~」と呼びかける?くらいに賢いことは、誰でも知っているはずだ。本来、三歩で忘れるとその行動を揶揄されるのは、鳥ではなく鶏、ニワトリである。トリ肉を買うと言えば、自動的に鶏肉のはずで、トリ=鶏、「三歩で忘れる鶏頭」が正解なのだ。「鳥頭」などとして、文鳥を愚かな生き物と見なすようでは、よほど「鶏頭」と思われると心得られたい。
 ニワトリを賢い生き物とする見解は、残念ながらあまり聞かないが、小鳥類は総じて賢い。わけても、文鳥は気味が悪いくらい賢い、と私は主観的に感じているが、実際、絵や音楽の好悪を判断するなど、科学的にも侮れない脳の働きを持っていることは、客観的な実験でも証明されているので(慶応大学の渡辺茂教授のご研究)。
 今市子さんは、文鳥がインコより低脳と思い込んでもいるようだが、その認識も大いに疑問だ。しゃべれば賢いとか玩具を用いれば賢いとか、とかく人間と同じ動作ができれば賢いと見えてしまうものだが、それは舌や脚の構造に起因したもので、頭の良し悪しとは無関係のはずである。工作がうまかったり喋りが流暢なのは、才能豊かには相違ないが、賢いことにはなるまい。生き物の頭の良し悪しを何によって測れるものかわからないし、測ったところで、賢いほうが良いとも思えないが、文鳥の思考パターンは、気味が悪いくらいに人間的なところがあり、その点で、ペット動物で他に例がないくらいに「賢い」ことに、毎日付き合う飼い主には、気づいて欲しいところだ(個人的には犬同等。犬より人間的な思考パターンを感じるので、その点犬より賢いかもしれない)。

 「シードのカロリーが高い」と言うのも間違った思い込みだ。
 「カロリー」と言葉では知っていても、皆さんはそれが何かを理解しているだろうか?もちろん私も忘れているので、今ぱっぱっと調べ直して書いておくが、カロリーとは「生理的熱量」のことであり、食べ物についてのカロリーは、それに含まれる三大栄養素、脂肪、タンパク質、炭水化物を、それぞれ、9kcal/g、4kcal/g、4kcal/gとするアトウォーター係数に当てはめて算出される。そして、この係数では、脂肪(脂質)は他の2つより2倍以上となっているので、脂肪分を多く含む食べ物は高カロリーになり、従って、一般的には、高脂肪=高カロリーと考えて良いことになる。
 普通の配合飼料に含まれる、ヒエ、アワ、キビ、カナリアシード、米、といったものは、調べ方により数値に変動があるものの、脂肪は4パーセント前後に過ぎない(飼料会社の近喜商事のパッケージでは、ヒエ4.8%、アワ3.8%、キビ3.8%、カナリアシード3.5%となっている。日本食品標準成分表2010によれば、玄米は2.7%)。一方、一部の獣医さんが推奨しているアメリカのハリソン社のペレット『ADULT LIFETIME SUPER FINE』の脂肪含有率は、6.0%以上となっている。つまり、ペレットの方が高カロリーなのは明々白々な事実である。カロリーだけで全てを判断するのは危険で、太りすぎた際のダイエットのために、穀類の配合食よりペレットの方が有効である可能性は否定できないが(何らかの「エビデンス」=科学的な根拠の提示がなければ肯定どころか検討も出来ない)、ペレットはシードよりカロリーが低いから、とすれば、それは事実に反するデタラメ以外ではなくなる。
 なぜ、このようなデタラメな思い込みをしてしまうのか、よく通われている獣医さんの影響なのかもしれない。文鳥の配合飼料に含まれる雑穀類は、総じて低脂肪=低カロリーだが、同じ「シード」でも、ヒマワリの種など大型インコのエサになるようなものは総じて高脂肪=高カロリーなので(飼料会社の近喜商事のパッケージでは、ヒマワリ21.0%、アサの実25.6%)、そちらの知識をそのまま文鳥に当てはめてしまえば、「シードのカロリーが高い」となってしまうのである。しかし、それは全く見当違いで非科学的な思い込みに過ぎないのは明らかで、獣医さんでそのような主張をする者は、たんに無知蒙昧で思い込みが激しいだけか、主食を「処方食」として、病院に定期的に通わせるための方便と、見なすしかなくなってしまうと思う。
 ペレットについては、ちょうどそれが好きな人からメールを頂き、見直していたところなので、近日中に再論したい。

 今市子さんは、環境温度の調節に苦労されているようだが、動物病院に行く回数を1回減らしてでも、サーモスタットを買ったほうが、文鳥の健康のためには役立つだろうと私には思えるのだが、どんなものだろう?
 また、今市子さんは、文鳥は東南アジア出身なのでエアコンを付けるべきではないと思っていたので、文鳥も「室温32度以上だと不快」になると獣医さんから指摘されて驚かれている。確かに、赤道に近いほうが暑いと思えてしまうが、かなり頻繁に、日本の夏の暑さはインドネシア以上に猛烈になることを、日本人は知っておいたほうが良いかと思う。我が国土の夏の暑さは、実際には『世界最強』クラスで、昔の日本の家屋が風通しよく作られているのはそのためだ。冬の寒さには耐えられても、夏の暑さは耐え難い自然環境なのである。
 その理由は、赤道付近であっつあつに熱せられた空気の塊(太平洋高気圧)からの熱風をまともに受けるからだが、実際のところ、手近にある昔(2003年版)の地理統計要覧をめくっても、温暖湿潤気候東京の8月の平均気温27.1℃は、ほとんど赤道直下の熱帯雨林気候ジャカルタの27.6℃で、ほとんど変わらない。さらに、近年の東京の場合では、ヒートアイランド現象が加わり、さらに暑くなっている。
 治安状態が良く、夜間には気温が下がった昔は、窓を開けて就寝する方が普通だったが、今現在、特に都市部の住民は、夜間は窓を閉めてエアコンを28℃くらいに設定して就寝したほうが良いかと思う。ヒートアイランド現象で夜間も気温がほとんど下がらないため、窓を閉めたら暑くて眠れず、眠れば脱水症状を引き起こしかねない。

 それにしても、今市子さん家も大変である。読む人によっていろいろな感想があるだろうが、私が作者と同じような対応をしていたら、身が持たないことだけは確かだ。
 なお、13巻に文鳥が蛇に襲われた話があって、経験者だけに驚いたが、もちろんそういった際は、ふん捕まえて救出する一手である。四の五の考える暇があるなら手を出せ!蛇が嫌いならヒモが巻き付いたと思え!そんなものヘビ皮のベルトと変わらん!が、鬼軍曹的なアドバイスとなる。何も考えないか、考えるなら蛇ではないとだけ考える。
 いちおう事後処理としては、常習化する可能性があるので、かわいそうだが、侵入した蛇は捕殺したほうが良いと思う。嫌な話だが、しっぽを持って頭を地面に叩きつけつつ、「蛇殺しのすみかにうかつに入り込んだ身の不幸を嘆くが良い」と唱えるしかない。
 もっと大きな蛇だったら・・・とか妄想しているのが、今市子さんらしくておかしかった。もっと大きければカゴの隙間からは入れないので、被害はなかった、とは思いつかないらしい。
 友人の漫画家さんがニシキヘビが侵入して自分の猫を襲ったら・・・、と妄想している話もあるが、妄想でも、包丁片手に突撃しなければならない。丸腰では手も足も出ないが、包丁一本で圧勝である。巻き付かれ始めた段階なら、ライター1本でも救助は可能かもしれない。おそらく火であぶられたら逃げ出す・・・。

 いろいろ妄想するのも、シミュレーションになって、心構えにもなる。今市子さんも言っているが、ペットロスに備えて、心の準備は必要かと思う。


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