動物園には文鳥禽舎を!

飛ぶ文鳥(ノッチ)
飛ぶノッチ

 動物園は、見世物小屋であってはならないと思う。珍奇な生き物を檻に入れて、見物客に見せれば喜ぶなどという時代は、とっくの昔に終わっている。珍奇な生き物であっても、テレビなどで映像としてなら見知っている多くの現代人が望む動物園の展示のあり方とは、躍動する動物たちの姿を臨場感豊かに感じ取れることにあるはずで、それは北海道の旭山動物園の事例を見れば理解されることと思う。
 檻の中でかったるそうにしている猛獣など、見てもつまらんのである。従って、昔から、動物園好きな人には、ニホンザルの猿山が人気なのだと思う。個々のサルたちはいろいろな動作を見せてくれるし、それぞれのサル同士の社会的な関係を、見れば見るほど理解出来て楽しくなるはずである。
 哺乳類ならニホンザルの猿山、鳥類なら・・・それは文鳥の群居展示しかあるまい。基本的に夫婦単位で行動する生き物なので、ニホンザルのような階層的な社会性は無いが、好悪で微妙な相互関係をもっており、そこまで気づかなくとも、とにかく飛び回るし食べまくるし鳴き回るので、見ていて眠くなることはない。小さな生き物で小回りが利くので、6畳間程度の空間に20羽程度いても、狭くてかわいそう、といった印象はない。人間の耳には奇声に感じる音を発せず、夜は静かで、エサ代はごく安く、丈夫で繁殖力も旺盛・・・。弱小「動物展示場」の沈滞ムードを覆す展示動物としては、ほとんど奇跡的な存在ではないかと思う。
 予算の少ない小規模な動物園の類が、なぜ文鳥禽舎を作らずに、色彩豊かでも動きは少なく、はっきり言えば退屈な(あくまでも見物人レベルの観察での話)生き物を展示したがるのか、まったく不思議である。弱小の規模では、その存在だけで人を呼べるような「客寄せパンダ」を展示することは出来ない。貧乏だし、飼育スキルもないのだから、それは当然で、タシして珍しくない生き物を、それも不適切に狭苦しい檻の中に入れ、漫然と見世物にしたところで、誰が喜ぶものか!
 少しでも珍しい生き物を展示しようと、少ない予算を使うより、見慣れていて物珍しくもないように思える生き物の(実際はペット動物は多様化しているので、文鳥でも珍しく感じる人は多い)、あまり見ることの出来ない本当の姿を、見てもらえるように、頭を使ってもらいたいものだ。文鳥など、そこらのホームセンターで数千円で売っているが、集団で飛び交っている姿となったら、ほとんどの人間は見たことがないことがないのである。安上がりな、そういったコンテンツの方が、お客は呼べる。種類より見せ方なのである。江戸時代の見世物小屋の発想から、脱してもらいたいと思う。

 以上は、白文鳥の発祥地と思われる愛知県弥富市の間崎公園などで、「文鳥展示」が行われているのを知っており、我が家の近くグリーンセンターにそれを期待していた個人的な感慨である。グリーンセンターの園内にバードセンターという一画があって、文鳥だけでなくとも、小鳥を群居させる大型ケージがあるかもしれない、と期待していたのだが、クジャクだの大型インコだの、この手の施設の定番見世物を、漫然と展示しているだけとのことなので、がっかりしているわけだ。文鳥禽舎があれば、毎晩家の中で20羽超の群鳥の舞を見ている者でも、年間パスポートでも買って、ちょくちょく見学に行ってやろうと思っていたくらいなので、ホロホロ鳥より客寄せ効果があると思うのである。
 公園の一角に「ふれあい動物コーナー」といったものを設ける自治体も多い。子供らにモルモットを抱っこさせるのも結構だが、飛び交い遊ぶ生き物の様子を、(野鳥では難しいので)文鳥観察する機会も作ってもらいたいと思う。

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