換羽で後頭部ハゲ状態のケコ
お客様から換羽なので、主食はヒエだけにしたほうが良いか?と質問を受け、少し驚いたが、そのように飼育書にあったと言うのである。
その説を唱えたのは、宇田川達男教授で、私の所持する『やさしい小鳥の飼い方』(1996年有紀書房)にも、次のように書かれている(P62・63)。
「(脱毛が始まったら)処置としてはまず、餌を弱くすることです。なるべく脂肪分を少なく、ヒエだけでよいでしょう。かわりに青菜やボレー粉をよくかえて食べさせます。次に、かごや庭箱の内部を暗くすること。日光に当てないようにしないと、いつまでもトヤが続いて、それだけ鳥は疲労します。黒っぽい布ぎれをかぶせて、日光を遮蔽するとよいでしょう。脱毛が終わったら今度は反対に餌を強めます。そして覆いをとりはずし、強い風に当てないように日光浴をさせます。すると新しい羽毛が生えはじめ、すっかり生えそろうともう夏です」
教授は小鳥飼育に詳しい方だが、いろいろと誤解されていたように思える。そもそも、ヒエを脂肪分の少ない弱いエサと言われているが、同書内で掲げる栄養価表(P48)によれば、ヒエは脂肪9.2で、3.5のアワやキビの二倍以上、4.9のカナリアシードよりもはるかに「強い」飼料になっている。
そもそも、脱毛がすべて終わってから、新しい羽毛が生えてくるわけではない。本来なら生活に支障をきたさないように少しずつ順次生え変わるはずである。もし、宇田川教授の小鳥たちがどばっと抜けて、丸裸状態になってから、新しい羽毛がワサワサ生えてきたのなら、それは特殊であり、少なくとも不自然と言わねばならない。
博学な教授は、猛禽類の換羽時の暗所(鳥屋【トヤ】)での安静を参考にし、小鳥の飼育に敷衍してしまったのではないかと思う。
羽はタンパク質で出来ているので、単純に考えれば、タンパク質の豊富な飼料を与えたほうが、換羽は円滑に進むものと思う。栄養の蓄積ができない小鳥と、数週間絶食することも可能な、猛禽類とを、同一に考えないように気をつけたいものだ。
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