都知事の石原閣下と作家の田中さんが、芥川賞をめぐって話題になっている。年齢の差こそあれ、古より大概は「小心」である文士たちのじゃれ合いに過ぎず、放っておけば良いことだが、あえてどちらが恥ずかしいかと言えば、イシハラさんだろう。
どういったものであれ、賞を授与する側は、受賞者を称えるのが礼儀以前の常識であり、ケチをつけるなら授与しなければ良い。授与を決めた選考者に名を連ねておきながら、選考した結果をけなすなど、まるで理屈に合わず、むしろ自己否定でしかない。「何を選考したんだあんたは?」、と言われるだけなのである。つまり、都知事としての記者会見中、「自分の人生を反映したリアリティーがない。馬鹿みたいな作品ばっかりだよ、今度は」などと、選考員会の会合でのみ許される内容を公言されているのは(朝日新聞)、ご自分の立場をわきまえない愚かな所業以外の何ものでもない。
この際、発言を全面撤回して謝罪するような日本的な潔さを、礼儀をわきまえない現在の日本人に示してもらいたいところだが、往古の美徳を賛美する年寄りほど、実践が伴わないのが、古今東西を通じた真理であり、元々が、徳なく打たれ弱いエリートボンチの威張りん坊と評される人物に、それを期待しても酷であろう。せいぜい「もう辞める。全然刺激にならないから」と、子供じみた捨て台詞を交えつつも、お辞めになることを良しとすべきかと思える。
なお、タナカさん曰く「いまあの人おじいちゃん新党を作ろうとしてるんでしょ」とは(記者との応答内容)、衆議院の解散気配に反応した黄昏だか立ち枯れだかの面々と、時代遅れの郵政亀あたりの行動であろうか。文学オタクの酔っ払いの戯言に便乗するのも癪だが、確かにああいった日本的な潔さの欠片も持たない年寄り連中を見ると、今の日本人にダメな点があるなら、原因はこの人らの影響ではないかと思えてしまう。戦後、尊敬に値するお仕事をされた立派な方々は、既に亡いか、分を心得た控えめな発言をされるので目立たないだけに相違ない。ご老人たちの、ほんの一握りの不覚仁のこととは言えども、老残とは見苦しい限りだ。
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