さえずられると避けるようになった貞淑なニッキ
読書している。といっても、「書」とは呼べぬ、と言われても反論は出来ない。
NHKのドラマ『坂の上の雲』を見ていて、「伊地知さんがかわいそう」と思ったのだが、司馬さんの原作は一度図書館で借りて読んだだけで、日露戦争についての知識も無かった(高校の教科書レベルならある)。そこで、『坂の上の雲』と、日露戦争関係の一般書を少し読むことにして、古本を購入した。さらに、今週から4年前にNHKで放映された『風の果て』が、チャンネル銀河で再放送されているのに気づいて、大喜びで見ながら、原作を読みたくなり、早速、ブックオフで注文した。その際、他に面白そうな本を探したら、イラストレーターの「ぶんころ」さんという方の『ぶんちょこ』という本があった。どういったものか、アマゾンで確認したら、読者レビューでの非難が華々しかったので、かえって興味ひかれて注文したのであった。
で、今日の午前中に届いたそれを、『坂の上の雲』を脇において、読むなり見るなりしていたのだが、内容的に腹立たしく感じられる面はなかった。この程度の内容で、あれほど感情的に非難できる、レビューの諸氏の若く鋭敏な感性が、むしろ、うらやましい。より正直に言えば、この著者が「最低の飼い主」だったら、これ以下の無茶苦茶をしている連中は何と呼べば良いのか。そもそも、他人様を「最低の飼い主」などとする非難は、どれほどの飼育経験に裏付けられたら出来るものなのか。まったく、不思議になってしまった。
念のため断っておくが、一年前に発行されたこの本の存在を、数日前に知ったくらいに、同じ文鳥好きでも、「鳥仲間」を求めてオフ会をしたがるような人たちと縁遠い。当然、個人的な付き合いはないので、特に擁護する立場にはない。むしろ、仲間で集うタイプの人たちには、多少批判的に見ているように思われているだろう、といった認識を持っている。たんなる気質の相違なので、否定出来るはずもなく、批判する気もなく、むしろ大いにやっていただきたいと思っているが、確かに、仲間が集まるのは良いとして、何となく馴れ合いかばい合いもたれ合い誤魔化し合って表面上つくろうために集うようなものなら、それは大丈夫(大人の男)の良くすることではない、といった古風な偏見も多少内在しているのも事実かとも思う。
したがって、良くも悪くも情実はまったく無しだが、星4つくらい与えるべき、という感想を持った。例えば、今市子さんの『文鳥様と私』には、間違いを間違いと気づかず、失敗を失敗として描かない箇所もあり、なぜか飼育書のように読んで真似したがり、さらに何を血迷ったものか、私に質問してくる愛読者の飼育初心者がいたりするので、迷惑な面もあった(過去形)が、こちらは大枠として、失敗を失敗として描いているだけだ。失敗を失敗として描いている内容を、それと知りながら真似するバカはいないだろう。描かれた痛恨の失敗談に、文鳥ライターの伊藤美代子さんによる文章のフォローも多少あるのだから、普通に読めば、過去の著者の姿を反面教師なり他山の石にするだけのはずで、これは、むしろ「使える」本、他人に薦めて良い本だと思える。
確かに、数日留守にするにあたって、わざわざすきま風を吹き込ませた真冬の部屋で(冬に換気が必要になるのは、炎の出る暖房器を使用している時くらいだろうに・・・)、夏目漱石の『文鳥』における過失を(=凍死・餓死)をなぞるなど、とんでもない話に相違ないが、一生の痛恨時と自覚してそのように描いているので、他人がとやかく言っても、言ってるその他人個人の自己満足しかならないだろう。
過去形でも、もしかしたら現在進行形でさえも、いろいろ起こしている飼い主である私が書けば自己弁護にもなると承知であえて言うなら、長く飼っていれば、飼い主が人間である限り失敗は絶対に起きる。必ずや、「やらかす」。ヒヤり、ハッと、した経験を含めれば、それがない飼い主など有り得ないと言える。必然と言える飼育上の失敗を伏せた綺麗事ばかり並べられたお話だけを、読むなり見るなり聞くなりして、飼育の現実を知ったかぶるよりも、現実の失敗談を役に立てることを、飼育経験の浅い人には心がけてもらいたいものだと思う(他人の役に立てば、その飼い主の恥も無駄ではなく、亡くなった文鳥の供養にもなるかもしれませんね)。
なお、特に失敗談として描かれている気配のない高校生の頃のおおらかな飼い方から、他山の石を拾うなら、トイレに連れていくのは避けるべきであり、金魚の水槽にはフタしておくべきであり、家の中での放鳥時間や場所を限定していれば、迷子にしてしまうようなこともなかっただろう、といったくらいかと思う。当然ながら、懸命な飼い主諸氏は、同様の悲劇を避けるべく心がけるに相違ない。しかし、いくら注意していたつもりでも、万一同じような過ちを犯したら、その時は、自分だけではないので、自分だけを追い詰め過ぎるのは避けてもらいたい。
あとは、シナモンが赤目で弱視のようなことが書いてあったが、それは「いなり」君(うまいネーミングだ。機会があったら真似しよう・・・)が持つ障害で、シナモンに弱視が多いことはないはず、と指摘しておきたい。個人的には、特にセキセイインコとの比較の描写が楽しく、一年前に気づいて新刊で読めば良かったと、わずかに後悔したのであった。
ついでに、今日、正月用の日本酒『住吉』(『樽平』も)が届いたので、夕食を鍋物にして「味見」をした。夜の放鳥に差し支えるので、コップ2杯にとどめたが、この瞬間は、冬こそ良いものだ。
コメント