台湾産として売られていたエコ
昨年の1月に、台湾で鳥インフルエンザ(病原性の低いH5N2型)が発生し、かの国からの文鳥の輸入が止まったのは知っていたが、1年半以上を経過した現在も輸入禁止状態が続いていることには、今日になって気がついた(農林水産省)。
つまり、現在流通している文鳥は、ほとんど国産のみということになる。これは大変に結構なことだが、今回ペットショップを経巡っていて成鳥が少なく感じる理由は、この辺りにあるのかもしれない。それならやむを得ない。安さのみのために、品物のごとく生き物を輸入するなど、あってはならないことだと私は思うのだ。
ただ、濃い桜文鳥は、台湾産の方が安定しているかもしれない。何しろ、台湾では白は白文鳥同士、桜は桜文鳥同士をカップルとして繁殖させていると思われ、中間雑種の「ゴマ塩」を発生させないのだ。その点、「白文鳥同士だと弱くなる」だとか、理屈のない思い込みで品種の安定をはかろうとせず、白斑を蔓延させている国内の繁殖家は、反省すべきだと思える。
白同士で問題となるのは、弥富の特殊な系統のみであり、それとて四分の一の可能性で中止卵が生じるだけのことだ。生産性が低いならその分高値にすれば良く、実際桜よりも割高な期間が長かった(現在、シナモンやシルバーの一般化により価格差は縮まったが、桜が安かったのは、外見の品質が安定させなかった結果だと思う)。そのように割高であるため、白文鳥ばかりを生産したがる農家、一方経済合理性から、中止卵が生じない白と桜の組み合わせを推奨する公的な農業研究機関、といった関係があったようだが、いずれにしても品種の安定など考慮していなかったと言わざるを得ない。弥富にしても、台湾系を導入したり、シナモンやシルバーの繁殖に乗り出したり、伝統的な系統を破壊することにばかり邁進してしまったように思える。結果、桜と繁殖すれば白と桜が産み分けられる弥富系白文鳥は消滅し(「やとみ」とあっても弥富周辺の繁殖家が後に導入した台湾系の白文鳥で繁殖しているなら、地域的な特性など有名無実)、桜と繁殖すると中間雑種の「ゴマ塩」が生じる白文鳥のみとなるように思うが、外見に違いがないため、長い期間にわたって白文鳥の系統も混乱した状態が続いてしまうだろう。
食味を良くするため、いろいろな系統を混ぜ合わせ新種を生み出すことが、農畜産では重要となる。その場合、新たに優れた品種が生まれたら、元の品種は廃れ消滅する(お米やら鶏やら)。しかし、愛玩動物の場合は、犬猫の系統保存のような、純血種の確立とその保存維持を図る視点が必要不可欠のはずである。今現在自分が愛する品種を、守り継続させたいと考えるのが、愛好者の普通の感覚だからである。その点、台湾の生産者の方が、(思い込みや自分の趣味で品種を弄ぶ日本の好事家よりも)あくまでも結果的には、品種の保存継続の面で、格段に誠実と言える。
せっかく、台湾産が途絶え、弥富の大規模生産は崩壊したのだから、白は白、桜は桜、シナモンはシナモン、シルバーはシルバー、それが基本で、違う品種の組み合わせから生まれた子は『雑種』となってしまう、といった当然の認識を、市場に出荷する繁殖家にはプロとしての自覚を持ってもらい、その上で、ペットショップの広告で客寄せの安売り「商品」とされにくい程度の価格で、国産が流通していくことを願ってやまない。
【補足】
文鳥の一般的な愛好者(室内で飼育する飼い主)の中には、弥富産を求める動向があるようだが、それは白文鳥の発祥地と思われ、大規模生産の中心地として、文鳥飼育に多大な影響を残した同地域には、伝統的な系統がも守られ継続して存在していると、漠然と考えているためではないかと、私は思う。
しかし、現実は、弥富文鳥保存会のようなものは存在せず、今年他地域から導入した文鳥から生まれても、『愛知県弥富産』となるのが現実であり、残念ながら地域による特性など何一つないと言える。つまり、白と桜の産み分けを期待して、弥富産にこだわっても、その弥富で生まれた白文鳥は、近年導入された台湾などの他地域産の系統である可能性があり、「ゴマ塩」柄ばかりが生じる結果になって不思議はない(個人的には「ゴマ塩」も好きなのですが・・・)。
ずいぶん昔から指摘しているが(文鳥問題)、ブランドイメージに合わせて伝統的な弥富系の白文鳥を選択し、伝統のある特殊な系統として胸を張って高値で売るように転換してもらいたいのだが・・・、意識改革は難しいものなのだろうと思う。農業としてではなく、「動物愛護法」内の小規模な繁殖規模となった上で(大規模では流通が難しい)、守り育てる有志が現れるのに期待したいところである。
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