ヨビを誘い込むことに成功したシンさん
シンさんが紳士的な対応をとるのは、自分が「マドンナ」と決めたメス文鳥に対してだけで、その他に対しては暴君だったりする。息子のアトも好きなメスには優しく、無理に交尾しようなどといったオス文鳥にありがちな行動をとらないので、紳士と言って良い。もちろん、アトも、その他に対しては暴君だ。
この父子の違い。アトは、嫌われたり、相手に恋ビトが出来れば黙って身を引く本当の紳士だが(自分で書いていて何だが。褒めすぎではなかろうか。何しろ女房は存命なのだから・・・)、シンさんは相手が「既婚者」でもそのカゴに押し入り、あまつさえ抱卵中の箱巣にまで夜這いをした挙句、何もしないで一緒に抱卵しようとする変態、少なくとも変わり者だ。だてに「さん」付けされているわけではないキャラクターなのである(ペアとして売られていた相手のメイには、我が家に来た途端に振られてしまったし・・・。たぶん一緒にいた時に、ズレた行動をとりまくったのだろうと、想像する)。
そのシンさん、ついに「住宅展示場」にヨビを誘い込むことが出来た。何が嬉しいのかはわからないが、良かったのではなかろうか。
なお、息子のアトの方は、今夜はミナに秋波を送っていた。ミナも好意をもっている気配だ。・・・どうするつもりなのかは、皆目見当がつかない。
【附】文鳥の価格雑考~大規模生産の消滅と小売店の減少~
文鳥の飼い主の一部には、いまだに白文鳥の発祥地で文鳥生産農家による出荷組合が存在した弥富に対し、ブランドイメージを持っている。ところが、価格が安止まりし需要も減る一方であったため、文鳥生産農家は年々減少し、ついには壊滅状態になっている。
この件については、以前も触れたように(コチラ)、「弥富」という言葉に対して一部の文鳥飼い主が持つブランド力を活かす戦略がなかったことによる、当然の帰結だと私は思っている。それをより端的に言えば、価格が安すぎた、ということになる。
どれくらいで売っていたのか?1979年頃のことは、畜産全書に載っている。静岡の繁殖農家では、ヒナの販売単価を白350円以上、桜150円以上としており、「産卵能力が低下したり、繁殖用に適さなくなった種文鳥は商人に(白文鳥1,000円、桜文鳥500円で)引きとらせている」とある。愛知県の繁殖農家もヒナの販売価格は同程度の白380円、桜180円とし、3歳の親鳥は6月の換羽期が来たら出荷処分する」とし、その際の廃用親鳥の価格を、白750円、桜350円としている(断然桜文鳥派の私個人は、「差別しやがって!」と大きく舌打ちしているわけだが、当時は白文鳥の方がずっと人気があったのだ)。
大卒の初任給で比較すると、1979年から現在まで、およそ物価は2倍になっている。では卸売業者の買取り価格も2倍になったのだろうか?その点について、詳しいことはわからないが、某卸業者が各小売店に卸し売る際の価格が桜1,000円、白1,200円の半額と推定すると平均で550円となり、1979年頃の平均のほぼ2倍となる。
500円の文鳥で、年に300万円の収入を得るには、6,000羽売らねばならない。6,000羽のヒナを得るためには、1つがい年に15羽生むものとして800羽の親鳥を飼育しなければならない。実際は、飼料などの生産コストが別途必要となる。1979年頃の実例では、生産コストは収入の60パーセント程度なので、年収300万円とするなら180万円程度が必要となり、480万円、9,600羽売らねばならず、飼養数は1,280羽になってしまう。
もし、1,280羽もの文鳥を飼養することが可能で、年に9,600羽、月平均では960羽(通常産卵しなくなる夏の2ヵ月を除外)のヒナを生産しても、それだけ需要があるか、これは大いに疑問だ。
1羽500円では、文鳥の繁殖だけで生活するのは至難であり、月に2、3万円の小遣い稼ぎ程度としても、単純に考えれば、50つがい100羽以上の飼育が必要となってしまう。やはり、安すぎるのである。それではどの程度になれば適正な価格と言えるのだろうか。
いろいろな考え方があり得るが、飼育している純血種の犬が繁殖して、生まれてきた子犬を売った場合、1匹5万円として6匹で30万円となる。文鳥を10つがい20羽飼育して、1つがい年15羽のヒナが生まれるなら合計150羽、30万円にするためには、1羽2,000円となる。家庭で飼育する程度で、利益を期待するのでなければ、この程度、と言えようか。
こうした少数羽を、生産者(繁殖家)→卸売(問屋)→小売(お店)→消費者(飼い主)という流通に乗せるのは、おそらく不可能で、直接小売に売るか、繁殖者が直売することになると思われる。従来の流通パターンでは、卸売が500円で買う→小売が1,000円で買う→消費者が2,000円で買う、とすれば、生産者が2,000円で売ったものは、利率が同じなら小売段階で8,000円となってしまう。しかし、1羽での利益を、卸売が500円、小売が1,000円で良いのなら(ヒナは商品回転がすこぶる良い。つまり、在庫コストが少ない)、小売価格は3,500円で収まる。もちろん、卸売を通さなければ、仕入れ値の2倍としても4,000円で収まる。また、自分で販売する手間をかけない分、小売店への売り渡し価格を繁殖者側が1,500円とすれば、店頭価格は3,000円。逆に直販のため手間をかければその分価格を上げて2,500円、といった相場になるだろうか。このように考えると、今現在より割高から2倍程度、2,500円~4,000円が白や桜文鳥のヒナの価格として適正のように、私には思える。
文鳥を畜産物として大規模に「生産」し、安価に卸業者に売り渡す流通形態は、弥富の例を見るように継続が不可能になってきている。それでは、小規模の繁殖での品質管理をどのように保証できるのか、安定した流通をどのように確保するのか。例えば、一定の地域ごとに、たんなる同好者の仲良しクラブにとどまらない実質的な意味のある飼鳥組織が、一定の信用保証を与え、需給調整の窓口になるようなことは有り得ないものか。今のうちに、いろいろ考えなければならないように思える。・・・考えるだけでも大変だなぁ。
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