マスコミは垂れ流すだけ?

  あの保坂さんが首長でいらっしゃる世田谷区で、「ガイガー」(ガイガーカウンターを持ってさまよう暇な一般市民もしくは「プロ市民」の皆様のこと)のクレームがあったようで、それを受けた地方行政側が理知的な対応を出来ず、また、マスコミ各位が訳も分からず騒いでいたようです。
 水溜まり吹き溜まり掃き溜まり、下草が生え枯葉の積もる場所、そういったところには、セシウムが蓄積されピンポイントでは放射線量が高くなることくらい、いい加減に理解してもらいたいものですが、せっかくなので、どのように報道されたのか拝読しましょう。

読売新聞「東京・世田谷で高い放射線量、雨で運ばれ蓄積か」
 東京都世田谷区は12日、同区弦巻地区の住宅街の歩道で毎時2・71マイクロ・シーベルトの放射線量を検出したと発表した。
 計画的避難区域に指定されている福島県飯舘村で12日に計測された2・05マイクロ・シーベルトより高く、区では、東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質が雨水で運ばれ蓄積された可能性があるとしている。
  同区によると、今月6日に民家の木製の柵に隣接する歩道上の9か所で毎時0・09~2・71マイクロ・シーベルトを計測した。水で洗浄したが数値は下がらなかったという。
  区内の定点観測地点での放射線量は毎時0・05~0・08マイクロ・シーベルト。区は「なるべく近寄らないでほしい」と呼びかけている。

朝日新聞「東京・世田谷で高線量 2.7マイクロシーベルト」
 東京都世田谷区弦巻5丁目の区道を区が調べたところ、歩道の1地点で毎時2.707マイクロシーベルトの放射線量が測定された。保坂展人区長が12日、定例の記者会見で明らかにした。  現場付近は東京電力福島第一原発から直線距離で約230キロ離れている。今回の数値は、計画的避難区域の福島県飯舘村役場のモニタリングポストで12日に測定された毎時2.115マイクロシーベルトより高い。ただ、毎日8時間を外で、残りを木造家屋で過ごしたと仮定して計算すると、年間被曝(ひばく)量は14.2ミリシーベルトとなり、国が避難を促す目安としている20ミリシーベルトよりは低い
 現場の区道は地元の区立松丘小学校の通学路に使われている。区は「通行するだけでは身体に大きな支障が出る状況ではない」としているが、当面、一部に立ち入らないよう指導を始めた。今後、砂場がある区内の公園258カ所についても緊急に計測するとしている。

毎日新聞「空間放射線量:世田谷の区道で2.7マイクロシーベルト」
 東京都世田谷区は12日、同区弦巻5の区道で、国際放射線防護委員会の基準などを基に区が独自に算出した安全の目安とする空間放射線量(毎時0.23~0.25マイクロシーベルト)の約11倍にあたる最大毎時2.70マイクロシーベルト(6日現在)を測定したと発表した。区は「通行するだけでは身体に影響はない」としているが、住民の不安に配慮し、周辺を立ち入り禁止にする緊急措置を取った。
  ◇区の安全目安の11倍
  区環境保全課によると、区民が3日、区道の歩道部分を簡易測定器で測定し「放射線量が高いようだ」と報告区が圧力洗浄した後、6日に9カ所を測定したところ、0.08~2.70マイクロシーベルトを検出した。地上5センチ、50センチ、1メートルの3段階で5回測定し、その平均値を出した
  区道は住宅街にあり、区立松丘小の通学路に指定されている。歩道部分は車道より低くなっていることから、同課は「雨水が集まり、放射線量が高くなった可能性がある」としている。今回の結果を受け、区は子供の安全確保のために今月下旬~11月、区内にある258カ所の公園の砂場で空間放射線量を測定することを決めた。
  区道で測定された2.70マイクロシーベルトは、1日のうち屋外で8時間、屋内で16時間過ごした条件で計算すると、1日の被ばく量は38マイクロシーベルト。年間で14ミリシーベルトとなり、国が避難の基準としている年間20ミリシーベルトは下回る。
 労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則では、外部放射線と空気中の放射性物質による実効線量の合計が3カ月間で1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域は、放射線管理区域に指定するよう定めている。1時間当たりに換算すると毎時2.60マイクロシーベルトで、通常、原子力施設などではこの値が管理区域に設定する基準となっている。

 NHK「世田谷 放射線量下がらず対応検討」
 東京・世田谷区の区道で、1時間当たり最大で2.7マイクロシーベルトという高い放射線量が検出されました。世田谷区は、道路の表面を除染しても放射線量が下がらないため、専門家に相談して対応を決めることにしています。
 世田谷区によりますと、高い放射線量が検出されたのは、世田谷区弦巻の区道の長さ10メートル、幅1メートルの歩道部分です。区が今月4日に測定したところ、1時間当たり最大でおよそ2.8マイクロシーベルトと周辺に比べて特に高い放射線量が検出されたということです。このため世田谷区は、高圧の洗浄器を使って道路の表面を洗浄しましたが、1時間当たり最大で2.707マイクロシーベルトと放射線量はあまり下がらなかったということです。これは年間の放射線量に換算すると14.2ミリシーベルトで、国が避難の目安としている20ミリシーベルトを下回っていますが、計画的避難区域に指定されている福島県の飯舘村役場の12日の測定値よりもやや高くなっています。この区道は、ふだんは小学校の通学路になっていて、近くに幼稚園もあることから、区はこの場所をコーンで囲って立ち入らないよう呼びかけています。放射線量は、通常、汚染されている路面に近いほど数値が高く、路面から離れて高い場所で測ると低くなります。ところが今回の場合、路面付近よりも50センチから1メートル離れた場所の方が高い数値が検出されたところもあるということです。さらに道路の表面を除染しても放射線量が下がらないことから、世田谷区はどのように除染していくべきか、専門家に相談して今後の対応を決めることにしています。

 まず、飯館村の空間線量と安易に比較すること自体が不見識です。飯館のそれは、おそらく地上1メートルほどで測定しているはずで、「地上5センチ、50センチ、1メートル」の平均値ではないからです。また、数メートル離れたら線量がくんと落ちるようにピンポイントの話ではなく、その周辺域一帯が同程度の線量だから問題なのであり、「ガイガー」が側溝の枯葉の上に測定器を乗せて、数値が高くなって「喜んでいる」のとは、まるで異なる生活上切実な話です。ずっと安全な地域での暇人のお遊びと一緒にするのは、不謹慎というものでしょう。
 読売の報道は曖昧すぎて扇動的になる恐れがあります。「東京でも線量が高いなんて、!怖くて子供を外に出せないわ!」といった反応を招きそうに思われます。朝日はまだましですが、測定方法も現場の様子もわからず、いい加減な記事になってしまっている印象です。毎日は一見詳しいですが「区の安全目安の11倍」などと煽るような見出しを付け、なおかつ自分たちでどういった意味合いがあるのか考えている様子が見えません。その点より詳しいNHKも同様ですが、こういったニュースは解説せずに垂れ流されても困ると思います。
 こんなもの「専門家」に尋ねなくとも、常識のレベルで一目瞭然でしょう。現場を見れば、問題は舗道ではなく、それに面したボロボロの木製の塀であり、そこからはみ出す手入れのされない下草の類と、多少とも知識があれば気づかないはずがないです(気づかないのは今まで何も学んでいない証拠)。舗道が発生源ではないので、そこを高圧洗浄機で「除染」しても無意味で、ボロボロの木材は樹皮がセシウムを溜め込みやすいのと同様の状態であるため、それに近ければ、地表面より高い位置の放射線量が上がるのも、当たり前と言えるはずです。
 問題は、こういった場所が私有地のため、勝手に「除染」が出来ず、線量の測定すら難しい点にあるかと思います。この程度の汚染を解消したい首長さんなら、記者会見などで不安感を煽るよりも、法的にある程度強制的に除染ができるような仕組みを作るか、少なくとも自分の行政管轄地域の住民に対し、放射性物質がたまりやすい場所の清掃を求め、それに対する地域の活動を支援していくべきだと、私は思います。当然、見識のあるマスコミなら、情報を伝えるばかりではなく、その持つ意味、問題があるならその改善策の提示くらいして欲しいものです。特に、情報が錯綜し、不安でさらに不安な情報ばかりを呼び込んでしまう人が多い現在、情報を受け手まかせにしないように、報道の際に配慮することが求められていると思います。

 最後に、「3大紙」ではないので(毎日はずいぶん前から「大」ではないと思うが)省いた産経新聞の、「不肖ミヤジマ」のコラムが面白かったので紹介しようと思いましたが、まだ電子版になっていないようなので、それについては、そのうちに(覚えていたら)、ご紹介したいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました