人に話しかけられたいケコ
ケコは思い切り手乗りではないかと思われる。同じお店で購入したカナも、初めから手乗りどころか、手のひらにも懐にももぐりこんだが、それ以上かもしれない。
人間が近づくと喜び、顔を近づけても逃げるどころか擦り寄り、豆苗を指につまんで差し出すと、恐れ気も無く食べ、相手をしないと文鳥キックをする。下の階から文鳥たちの鳴き声が聞こえてきても、チュンともピッピとも鳴かず、じっと寡黙に人間が近づいてくるのを待っている。
あのお店のおじいちゃんが、カゴから出して遊ぶことは無かったかもしれないが、相当にやさしく接していたことは確かだろう。いかに人からの差餌(サシエ・給餌【キュウジ】)を受けて育った過去があっても、その後相手にされなければ、親鳥が育てた荒鳥とさして変わらなくなるものなのだ。
昔、非手乗りとして購入した文鳥が、かなり早く人馴れするのを不思議に思ったものだが、これはむしろ当然なのだと、最近は思うようになった。何しろ、売られている成鳥にも、差餌経験がある「手乗り崩れ」の方が多いと思われるのだ。
ヒナ段階からお店にいて売れ残ったものばかりではない。何しろ、繁殖農家で繁殖の種鳥となっているほとんどが、差餌を受けた文鳥なのだ。先日、一般家庭での飼育方法としては否定されるべきものとして、早期に親鳥から引き離し、差餌して一定の大きさになって出荷することを挙げたが、生産農家では、その差餌して出荷するヒナから種鳥を選んでいたようなのだ。
つまり、「廃用」の「親鳥」として出荷される文鳥たちも、遠い昔に差餌を受けた手乗り崩れで、もちろん、晩春など時期外れに生まれ、ヒナ換羽後に「若親」などとして出荷される文鳥たちは、より近々の差餌の記憶を持った手乗り崩れなのである。従って、毎日声をかけ、一緒に遊んでいれば、手乗り状態に戻って何の不思議も無い。
我が家の非手乗りたちも、最近は馴れ馴れしいのが多いが、おそらく差餌経験者たちなのだろう。となると、人馴れしないメイのような文鳥は貴重だ。あのような文鳥は、性格の可能性もあるが、小規模繁殖家が、成鳥として出荷するためか、たんに差餌する手間を惜しんだか、親鳥任せにしていて差餌経験が無いことを示しているかもしれないのだ。
手乗り崩れの方があまり飼い主を警戒せずに、家庭でも繁殖してくれる利点があるが、一方親鳥がしっかり育てた方が丈夫そうな気がする人もいるだろう。今後は、差餌の有無も、しっかり情報開示されるべきなのだろうと思う(「差餌経験ありの若鳥」だとベタ慣れになる可能性があるので、差餌をする時間の無い人には喜ばれると思うなぁ)。
【補足】
私は白いご飯に黒ゴマを降りかけた状態を連想して、昔からごま塩文鳥と呼んでいるが、胡麻斑(ゴマフ)文鳥とかゴマかけ文鳥の方が分かりやすいのかもしれない。白地に有色というのがポイントで、桜文鳥の白斑が多い個体とは異なり、国産白文鳥のヒナの姿に近いが、尾羽がほぼ真っ黒なのが特徴と言える。
たびたび引き合いに出して申し訳ないが『ザ・文鳥』では、白斑のある桜文鳥同士をペアにすると、子供は「親より白斑が多くなります」とするが、これは、経験上では認められず、桜文鳥同士では、色が濃くなっていくようだ。少なくとも、我が家は白と桜の娘のごま塩から発して、代々「桜文鳥」同士をペアにすることで、現在白斑がわずかの濃い桜文鳥になっている(逆に、昔々の大昔、白と桜で産み分け狙いをしたら、しっかりごま塩文鳥が生まれたが、ごま塩を白文鳥とペアにしたところ、次世代は完全無欠の白文鳥であった)。
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