キューとニッキのカップル成立
昼。仕事の合間合間に、シズとマルの追悼ページに写真を載せる作業をし、数年前の写真も掘り起こし、感慨にふけりつつ、さて、最近自分の娘(シュー)を追いかけ始めたキューをどうしたものかと考える。
そして、とりあえず明日からニッキと同居させることにし、さらに近々にノコリの妻候補にもなりうるメスを探すことに決める(実はすでに近所2件【鳥獣店とホームセンター】は確認したが、めぼしい桜や白文鳥のメスはいなかった)。
夜。いつものように放鳥。半ばを過ぎた頃、ニッキが妙な行動をとっているのに気づく。宿敵の白文鳥シンの留守宅をのぞきこんでいるのだ。さらによく見ると、その留守宅のつぼ巣をキューが乗っ取って雄たけびを上げていた。そして、キューが、その子供じみた行為に飽きて出てくると、ニッキも追いかけて飛んでくる。・・・これは、と思い、腕に止まったキューに、「あの色のすすけた目の赤い娘が、オマエさんのこと好きらしいぞ」とけしかけ、ほれほれとニッキのいる方向にキューの目が向くようにしてみた。
さて、偶然なのか、天才だけに飼い主の言っていることを完璧に理解してしまったのか、数分後には、一緒につぼ巣に入って仲良く毛づくろいまでし始めたのだから、驚くではないか。
飼い主が強制するまでもなく、文鳥たちの自由意志ながら、飼い主の望んでいたカップルが成立し、実に愉快であった。こみ上げる笑いを抑えきれずに2羽の様子を見ていると、放鳥終了時間の10分前、カゴの入り口にヤッチが出てきているのが見えた。
そこまで彼が来た時は、飼い主に迎えに来いと言っているのだ。昨夜は、そうして5分前に出てきて、水浴びをした。早速、デコなど数羽の文鳥がしがみついたままの状態でお迎えに参上する。
二の腕を差し出すと乗っかるが、バランスを崩して1メートルほど下の床に落下。拾い上げて水浴び場近くに下ろす。彼は、ここ数日は半ば居眠りをしつつ水浴びをするのだが、今日はしなかった。水浴びをせずに、湯漬けエサを少しつまんでいるヤッチに、それでは帰りましょうと、いつものように二の腕を差し出すと逃げる。これも彼が気まぐれにとる行動で、間違っても慌てて追い立てるようなことはしないのだが、ちょこちょこ動いてテーブルから70センチ下の床に落下してしまった。
横向きに床に当たるのが見えた。彼は特に理由がなくてもテーブルから落ちるので、これはいつものことだった。しかし、普通なら立ち直ってちょこまか動くはずが、そのままぐったりとしてしまった。慌てて拾い上げるが、半目を開けていたのも一瞬で、目を閉じて、息をしないまま深い眠りに入ってしまった。冗談のように死んでしまうのはやめて欲しかったが、ゆすってもさすっても冗談ではなかった。
呆然としたが、20羽からの文鳥たちを帰さねばならないので、彼をキッチンペーパーに乗せて置き、文鳥たちを帰らせる。ニッキはキューのカゴに入れた。
5、6分の間に彼ヤッチは遺体になっていた。冗談で息を吹き返してくれることはないのだが、何とも割り切れないところだ。結局、いつもナーバスになる換羽に入り、寒暖の差が激しい近頃の天候もあいまって、元々弱い心臓が、ちょっとしたきっかけで止まるまでに衰えていたのかもしれない。
今日は出さずにおけば良かったし、もう少し湯漬けエサを食べさせてやっていれば良かったと後悔する。しかし、そうしたところで、人知れずに「放っておいてください」と静かにカゴの中で亡くなっていたのかもしれない。
いろいろと起こしてくれたヤッチとしては、やはり劇的な幕切れがふさわしかったのか。それでも割り切れない。
割り切れなくても、埋葬はしなければならぬ。こんな季節はずれの氷雨が降る中、土に埋まることもないだろうに、と思いつつ早々に『文鳥墓苑』埋める。
墓石の下を4区分しておけば、1年間に4羽亡くなっても埋葬場所が重ならないと考えた計画は、あわてて続けざまに彼岸の彼方へ飛んでいく文鳥たちのために破綻し、今回は半年前にノロを埋葬した区画に埋めることになってしまった。
文鳥の遺体は、その土が微生物のすむ正常なものなら、すぐに土に返っていってくれるが、それでも半年では・・・、しかも冬季を挟んでのそれでは・・・、頭蓋骨などが残っている可能性がある。あまり墓場荒しのようなことはしたくなかったのだが・・・、クチバシらしきものを見つける。ノロ御免。一緒に丁重に埋める。
合掌。
なお、ヤッチの息子のキューの方は、ニッキと一緒に自分のつぼ巣で眠っていた。三度目の妻だ。どちらも、できれば長生きして欲しい。
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