数ヶ月前、開かずの押入れで発掘した火鉢は、せっかくなので灰を捨て、用途を水鉢に変えて水草とメダカとタニシの住みかにした。しかし、置いた玄関先が、日陰になりがちな上に、風で枯れ葉などが吹き溜まり、水質が悪くなってしまうようであった。そこで場所を変え、ついでに黄色の睡蓮(スイレン)を植えることにして、その睡蓮の株が届いたのが午前中の早い時間帯だった。
水鉢の底に粘土質の土を敷いて、睡蓮をさっさと移植し、泥が巻き上がっているが時間も無いこととて、速やかにメダカなどを放り込んだのだ。それほど時間はかからなかったはずだが、この私的な作業のロスを取り戻すべく、午前中のオッキの餌づけもそわそわと済ましたのだが、もしかしたらこの時、シズの異変を見逃していたかもしれない(姿が見えなかったので箱巣に入っていると判断した)。
確かに朝、シズは調子が悪そうだった。卵詰まりの症状が見られたのだ。しかし、大きく膨張して動けない感じでもなかったので、重大には考えていなかった。したがって、午後に水を交換する際に、餌入れの下から上に首を伸ばす妙な姿勢で、息も絶え絶えになっているのに気づいた時は、仰天したのであった。
しまった、卵詰まり状態が続いたか、卵管脱でも起こしているのだろうと思った。しかし、まだ生きてはいるが、体は冷たくなっているシズを取り出して、下腹部を触っても卵の感触はなく、卵管脱も起きていなかった。よくよく見れば、底網に、特に異常は見当たらない卵が一つ落ちていた。
産卵をしたものの体力を使い果たしたのか、ここ数日の寒さに体調を崩していたのか、それとも夫キューとの体力勝負の付き合いで、疲労がたまっていたのか、もしくは、産卵中のメスをねらうオス文鳥どもに追いかけられたのも影響したのか、理由はわからないが、危篤である事は十分にわかった。食べられないどころか、水も飲み込んでくれない。
・・・またか、と思うのだが、病院に行ってどうなるかなのだ。食えず飲めずで、途中で死んでしまう可能性のほうが大きそうだ。私は、自分で食べられない文鳥を助けるのは難しく、それを期待しないことにしている。それでも、キューの先妻センの時は、病院に行ったのだが、あの時は、エサは食べないものの水は飲んでいた。薬も飲んだ。しかしどうにもならなかった。
とりあえず、急務は温めることで、手に入れておくと、少し血色が良くなってきたようだった。
以降、時折ブドウ糖水にオレンジジュースを加えて飲ませようとするのだが、飲むと言うより、口に含む程度だ。
キューとの同居での安静は難しいので、バリアフリー化したカゴに別居させ、つぼ巣の下にシート式保温器、つぼ巣の前に30W保温電球を設置し、夜間も弱い暖房が付いている年寄りの寝室にケージを置いた。
夜の放鳥時間は、今日もたんたんと進み、すべてをいつもどおり帰還させ、恐々たる重いでシズを見にいけば、まだ生きていたし、つぼ巣から引っ張り出すと、体も温かであった。とりあえず寒くは無さそうだ。少し挙動が力強くなっていたので、飲んだり食べたりしてくれるかと期待したが、その点は変らなかった。
結局、何にも出来ないので、温かいつぼ巣に戻した。
キューは、少々異常な文鳥なので、その妻の体力を奪ってしまう面があるのだろうか。センとシズでは、キャラクターはかなり違うが、産卵数の減少傾向が見られ、産卵期間中に卵詰まり状態では無いが、食べられないまでに衰弱する点で、展開が酷似している。
センは気が優しい線の細い印象の文鳥なので、さもありなんと思ったものだが、シズは暴力夫と互角にプロレスするくらい無邪気だったので、「精神的に」それほどオーバーパワーされていないと思っていたのだが・・・。
やはり、ため息しか出ないな。
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