現政権は『55年体制』のゾンビ

 朝から亀(井)大臣閣下がテレビに出ずっぱりであった。ご苦労様と言いたいが、実にうっとうしく腹立たしいのが本音だ。
 国民新党などという政党は、小泉元首相が進めた郵政改革に反対の人々の一部が、時の総裁の方針に従わないため、自民党から放逐されて発生している。したがって、郵政を元通りにしようと行動して、何の不思議も無いが、それが民意を得ていると主張されては迷惑以上に滑稽だろう。何しろ、この政党の実力者3名(綿貫・両亀井氏)のうち、前回の選挙で生き残ったのは、亀大臣閣下一人と言う体たらくなのである。もし、前々回の「郵政選挙」の民意を、国民の多くが反省し、郵政の復旧を願うなら、あの2人も、ただの爺さんにならずに済んだはずである。
 小泉元首相なり、竹中元大臣が進めた改革の不備を改善する、というのが、第一党の民主党の方針だとばかり思っていた。そもそも、民主党は小泉氏の改革路線には大賛成で、亀井閣下などの「抵抗勢力」に加担した意見など、寡聞にして聞かなかったからだ。それが、改善ならぬ明らかな復旧を党是とする、国民の大多数から愛想を付かされた古い自民党の切れ端のような小集団の、唯一といって良いくらいな生き残りの人物に、郵政『改革』を丸投げしたら、どうなるだろうか。こうなるに決まっているのである。

 そもそも、近来20年程の間、間違いなく過半数、おそらくは大多数の日本国民が、終始一貫嫌ってきたのは、未来どころか現在すらも考えず、既得権益を守り、さらに拡大することのみを自己目的としているような、政治や行政の有り方であったはずだ。何でも反対するばかりで行政担当能力の欠如した野党第一党(社会党)や、既得権益にしがみつく「族議員」が幅を利かせる政権党(自民党)を瓦解せしめたのは、抜本的な改革を求めてのことではなかったか。ところが、フタを開けてみれば、既得権益を持つ団体の支持を何よりを大切し、政治力は手下になる議員数、その手下は金で集め、その金は既得権益団体から集める、といった、「ザ・自民党!」とも称すべき元自民党幹事長の小沢一郎氏が牛耳り、これまた「ザ・自民党!」と言ってもよい元自民党政調会長の亀井静香氏がのさばる政権になってしまった。この間の選挙の結果がこれだが、これを望んで投票行動した人が(一部の利権団体関係者以外に)いるだろうか?
 さらに、この政権で目だってくれている人物に、反体制を叫んでいれば、身分は保障され、仕事をサボって組合活動も出来てしまうという噂の、日教組だとか自治労といった、世間から冷たい視線を浴びていることにさえ気づかない組織の出身者なり、全面的な支持を受けている人物が多いのも、一時の熱狂から覚めた国民一般の不審を受ける要因となっているように思える。例えば、民主党参議院議員会長の輿石氏は日教組の出身で、民主党副幹事長高嶋氏は自治労の出身だ。さらに、後先考えず現みんなの党代表の渡辺氏を排除した自民党の実力者町村氏を、反自民の暴風に乗って倒した民主党衆議院議員の小林氏は、日教組から違法に金銭的支援を受けた事実が発覚しながら、議員辞職どころか離党もしていない。
 この労働組合出身の方々は、自民党が必ず政権党、社会党が野党第一党以外になる気無しの、『55年体制』のもとでは、当然社会党の支持者であった存在だ。ところが、今や、当時最も憎むべき、企業家・資本家の走狗にして金権腐敗の権化であった自民党中枢、田中角栄元首相・金丸信元幹事長の愛弟子である小沢一郎氏の、側近であり「チルドレン」なのである。
 本来しっかりと働く健全な労働者の権利保護のために必要不可欠な労働団体を、政治結社かサボり集団のように、一般国民を誤解させようとしているとしか思えない一部の労働組合は、当然ながら一般国民の違和感・不審感を受け、その組織率が減少一途であり、その支持政党であった社会党はほとんど消滅状態となってしまったとも言えよう。そして、次に支持するのが、「たんす貯金する不動産さん」とか「古い自民党の焼けぼっくい」とか「ザ・自民党!」などと非難される小沢一郎氏ともなれば、なるほど、この『革新』を叫ぶ人たちの本音が、55年体制の復古以外ではないことが明白となる。旧社会党でも、旧自民党でも、『旧』はどちらも同じだったと言うわけだ。

 現在、普天間基地の移設問題で、寝た子を勝手に起こして、今さら右往左往している鳩山由紀夫総理大臣閣下は、55年体制を守ろうとした人物として歴史に名を残すことになるのかもしれない。閣下は、旧社会党が瓦解した際に、避難民と化した社会党議員の多くを、(おそらく友愛の精神で)己の民主党に引き受けた。さらに閣下は、自民党との連立解消後に存在感が薄れていた小沢一郎氏の自由党を、己の民主党に引き受けた。つまり、おそらく歴史的使命を失った旧社会党と旧自民党を、その温かい友愛精神で延命させたのは、他ならぬ総理大臣閣下なのである。
 民主党を改革政党と見て支援し続けた一般的な有権者の思いを踏みにじり、温存してきた『55年体制』(鈴木宗男氏とその宿敵のような位置づけであった田中真紀子氏が、ともに与党内に組み込まれ、ともに国会内の委員長職を務めるのも、日本政治の摩訶不思議だろう)を表出させては、国民一般の支持を失うのは当然だ。『55年体制』、昔見た顔は裏方に下げ、守旧ではなく改革イメージをアピールしなければ、支持率など回復しないと思える。ただ、清新さに欠け、改革意欲に乏しく見えるのは、野党第一党の自民党にも言えることで、実に嘆かわしいところではある。

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