国の新型インフルエンザに対する行動を見ていると、いつもの事ながら、一般国民の視点に欠け、また非効率に思えてしまう点がある。
今回のインフルエンザは、普通の季節性インフルエンザ化するだけのものと考えられそうなので(何をしようと時期が来れば流行すると思っている)、個人的には何もせずに放置していて良いと思うのだが、高病原性のインフルエンザなり感染症に対するモデルケースとして格好の機会となるはずなので、細かい点を改善して欲しいと思う。
まず感染拡大を防止する(インフルエンザのような感染力の大きなものでは、遅らせるのが精一杯)のに必要な対策は、いわゆる「水際対策」で、具体的には空港等の検疫強化で感染者を国内に入れないことだろう。もちろん、今現在検疫間を増員して『発症者』がいないか目を光らせてくれている。
しかし、誠に遺憾なことだが、インフルエンザなどの感染症には潜伏期があるため、感染していても発熱などの症状がまだ現れないケースが多々存在する。従って、本来なら一定の期間隔離して発症しないか確認する必要があるのだが、日本に入国する一日数万の人間を、一週間程度隔離検疫することなど物理的に不可能だ。そこで、次善の策として、少なくとも日本に居住する人たちの帰国後の追跡調査が必要になってくる(短期滞在の外国人には出来そうもないので、水漏れの激しい対策でしかない事に留意)。具体的には、その帰国者に一週間以内に異常が起きたかどうかを把握することで、そのため↓のガイドラインに沿って、現在は帰国者に空港機内で調査票を提出させ、それを地域の保健所に通知しているらしい。追跡調査の実際の業務は、帰国者の居住地を管轄とする保健所などの出先機関が受け持つことになるからだ。
【新型インフルエンザに関する検疫ガイドライン】http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-02.pdf
ところが仄聞するところでは、人手不足のため、空港で集めた調査票を出先機関に送付する(ファックス通知か?)作業が遅れているらしい。これは何ともお粗末だ。日に数万の処理が必要なことなどわかりきっているのに、準備していなかったとはどういうことだろうか?
そして、あわてて検疫官なり係官を増員しているわけだが、そもそも調査票の送付など、記入者に封筒も配ってしまえば済むように思える。出先機関の住所をプリントして渡し、記入者に自分の居住地の出先機関を記入してもらえば良いだろう。検疫官は記入内容をざっと見てその場で封をして、速達に回してしまえば、二度手間にならず、貴重な人員を割かずに済むし、余計な事務費が必要でなくなる。
当然の帰結としてインフルエンザが蔓延した場合、さらなる拡大を防止するためには、感染者一人一人が留意して、他の人になるべくうつさないようにしなければならない。具体的には、発症した人が気安くひょいひょいと普通の病院に行き、待合でひしめく一般患者にうつすのを阻止する必要がある。
もちろんお国(厚生労働省)は、↓のように「感染した可能性がある方で発熱や咳の症状があるかたは、直接医療機関を受診せず、下記のリンク先を参照し、各保健所等に設置された発熱相談センターにご相談ください」と広報している。つまり、感染を自覚して、他人に迷惑を掛けないように、まずは窓口に連絡して、受け入れ態勢の整った場所で診察を受けてもらわねばならないし、そのようにしなければならないと、国民一人一人が自覚しなければならないのだ。
【都道府県による新型インフルエンザ相談窓口】http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090430-02.html
しかし、待ち行く人、今現在「新型インフルエンザ怖い」と何となく思っている人たちが、この窓口の存在を知っているだろうか?正直言って、私は自分が相談すべき福祉保健センターの電話番号など知らなかった。もちろん、発症者が街中に出現している状態で、万一にも自分が感染したと思えたら、調べて電話しようとは思っていたが、調べるまでは知らないのである。
インターネットなどで自分で調べられる人は良いが、特にお年寄りでインターネットを使いこなす人がどれほどの比率で存在するだろうか?はっきり言ってしまえば、人間は年をとれば適当にボケておめでたくなるのが現実だろう。それは、あれほど「振込み詐欺に注意を!」と執拗に、うんざりしきるほど繰り返されているにも関わらず、被害者が後を絶たないのを見れば明白であり、同様の事例は枚挙に暇が無いだろう。例えば、酒乱(30代になって自分の酒量をわきまえないものは皆酒乱と心得ねばならないと思う)で裸踊りをしたとかいう芸能人が、いくら2011年にデジタル化してアナログ放送が終波となると繰り返したところで、その時になってテレビの前で途方にくれる年寄りが五万と出るのは明らかな未来なのである。
世界的に見れば、愚かどころか十分に賢く規律正しい人の多い日本であっても、周知徹底というのは困難なものなのだ。インターネットで公表してるぞ、地方行政府の広報に載せたぞ、くらいではやらないよりマシな程度と肝に銘じて、より徹底した広報が必要だろう。と言っても実行は簡単だ。問題となるのはロートルな情報弱者だから、あくまでも単純に、「発熱したら、下の連絡先に電話を!」というフレーズと、それぞれの地域の連絡先だけをデカデカと印刷して(電話番号など全国共通にして、それぞれの地域ごとに自動的に転送するようにしておくくらい造作も無いはずなのに、そういった配慮すら今のところ出来ていない)、町内会の地域の各班長さんにでも配ってもらい、不自由な年寄りの一人住まいの場合は、ヘルパーさんに電話機の近くに貼り付けるように指導すれば良いのだ。日本はお年寄りほど、日本の伝統的な羞恥心を保っているはずなので、「他人の迷惑にならないように『ここ』に電話するんだよ」、と言っておけば、実にいじらしいくらいの生真面目さで守ってくれる人が多いはずなのだ(このような国は他にないと思う)。問題は、『ここ』と具体的に教えておくことで、その際細かな説明は無用だ。
そもそも普通のインフルエンザなら、幼年と老年の感染が一番危険なのだから、発熱した老齢者はすべて相談の上に受診といった体制を、常時維持しておいても良いだろう。子供も同様で、親よりしっかりしていて順法意識も高いことが多いので(単純だから)、学校で、「他人の迷惑にならないように、『ここ』に電話するんだよ」と先生が教えれば、家庭内で両親に対してさえ目を光らせてくれるのではなかろうか。
せっかくの機会なので、実効性のある対策がしっかり出来るように頑張って欲しいと思う。間違っても、夜中に会見などして、危機感だけをあおるような真似は避けて欲しいところだ。
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