病身の妻を守るハル
ブログは欠かさなかったおかげで、記録が正確に残っている。
カンが調子を崩したのが今年の1月2日。お腹を見て胆のう腫らしいと判断したのが2月3日だ。この間良くなったり悪くなったりで、市販薬などを与えていたが意味がないので止めた。そして、「死病に余計な治療などするほうが酷だ」と考え、初めから病院に行くことは一切考えず今日に至っていた。
「青色のしこりを発見してから、だいたい半年から一年以内に」亡くなってしまう不治の病だが、昨夜はいつもどおり湯漬けエサを食べ、特別メニューのエダマメも食べていた。それが、今朝少し元気がなく、13時頃には下段の止まり木の上で、嫌な感じに丸くなっていたのだった。
なお、この嫌な感じに丸くなると言うのは、おそらく経験しないとわからないだろうが、よほど鈍感でなければ、初見でもすぐわかるはずなので、未経験者は気にすることは無い。気にしたくなるくらいに関心を持って文鳥と接していれば、異常と言うのはわかるものなのだ。
さて、経済上の用事がある。看病しても治らない。どうするかと言えば、私はカンを指に乗せて上段のつぼ巣に戻してやり外出した。そして、・・・自分の中の数パーセントは釈然としないくらいだから、他人には理解できないだろうが、用事ついでに足を伸ばしてメス文鳥が売っていないか見に行ったのである。だが、セキチューみなとみらい店にいたメスの文鳥は、少し目付きが悪く肉付きがやたら良さそうなシナモン文鳥と、ごま塩加減の桜文鳥だけだった(後はオス数羽と静岡県産の桜文鳥のヒナが1羽いた)。
いくら何でも不謹慎だろうと言うのが、私の中の数パーセント、少数派の意見だ。しかし、もし夫のハルと引き離して隔離し、一所懸命看病し、今日の危機を越えても、不治である以上、それは闘病が長引くだけとも見なせるし、それでも結局は亡くなる。亡くなれば遺されたハルは、その日のうちに他所の女房(息子ハルの嫁のカナが第一候補)に言い寄るのはほとんど自明で、はるかに腕力のある父が息子の家庭を破壊するのを防がねばならない。つまり、遅かれ早かれ後妻は必要なのであり、万一うまくいかなくてもポン・テンの妻にすることも出来ると、三分の二以上の圧倒的多数の説得力ある意見は動かしがたい。私は、それに従って行動しないわけにはいかない。
15時30分。家に帰りカンを見ると、つぼ巣で丸まっている。安心半分の複雑な思いを抱きつつ(短い方が楽という意見も有力だ)、以前ゴンのために作っておいた療養用ケージを持ち出し、とりあえず湯漬けエサをかじらせてみることにした。逃げる元気はないので、簡単につかみ出せる。事態が飲み込めていないようでボンヤリしている。湯漬けエサをクチバシに付けてみても無反応だ。・・・そのまま手のひらに置き様子を見ると、2,3分後に意識を取り戻したようで、目を開いた周りを見渡し、湯漬けエサを少しかじってくれた。しかし、あまり手の中でのんびりしたくもなさそうなので、ハルの待つカゴのつぼ巣に帰す。
夜の放鳥時間。また下段の止まり木で丸くなっている。一段と体が冷たく感じられ、クチバシは細く見える。フンを確認すると、これは黄色っぽい粘液のひどい下痢状態だ。
さて、カンはどこで最期の時を迎えたいのだろうか?手の中、面白いもので、近くにハルが来ると湯漬けエサを食べるが、実際はもう食べる気はないようだ。しばらくじっとしているが、上に行きたそうなので、いつものように上方のつぼ巣に送って行く。放鳥時間が終わり、様子を見ると、ウトウトと眠っている。静かにつかみ出し、いちおうアルカリ水に少々パウダーフードを溶かした物を与えてみる。飲み込むのも厄介なのだろう。鼻から出てしまう。余計なことをせずカゴのつぼ巣に送っていく。転げ込むように中に入っていった。きっとここが望みの場所なのだろう。
後は何もせずに、飼い主も水割りでも飲んで寝てしまうべきだ。
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