換羽期のアワ玉

イガイガのハル
イガイガのハル

 昔の飼育書には、換羽期は粗食にし、水浴びや運動も控えるように書くものが多かったが、特に気にせず与え続けると、換羽期の方が消費量が増大する。
 考えてみれば、タンパク質で出来ている羽毛を新しく形成するためには、栄養がいつもより必要とされるはずで、それは火を見るより明らかだと思うのだが、なぜ粗食が薦められたのだろうか?
 昔この件について推測して、この説を説いた人には鷹匠などの猛禽類の飼育の知識があって、それらの換羽期の対処法をそのまま小鳥に当てはめてしまったのではないかという仮説に行き着いた。何しろ、猛禽類の飼育用語に「鳥屋籠り(トヤゴモリ)」というのがあり、換羽に入ったら、鳥小屋の中で静かに飼育しなければならないのだ(換羽を「トヤ」と読む理由もこれと関連するはず)。
 肉食の猛禽類は、普段でも獲物が無ければ何日も絶食する生き物なので、換羽の前に大量に食べ、それに備えることが出来る。また、滑空する生き物なので、翼羽が不完全だとうまく飛べないはずで、換羽中はおとなしくして体力の消費を抑えるのが理にかなっている。ところが、文鳥などの小鳥は、2、3日完全に絶食すれば確実に死んでしまう生き物だ。タカやワシのように事前に大量に食べて、換羽に備えるといったことが出来る体の構造になっていない。その代わり、羽ばたいて短距離を飛ぶ生き物なので、翼羽が多少不完全でもさほど大きな影響は無い。したがって、換羽中もせっせとエサを探してうろつきまわることが出来、また、そうしなければ換羽を進めるための栄養も得ることが出来ない。
 このように、同じ換羽でも対応は違わなければならない点を、十分に認識しないといけない。

 さて、換羽により禿げ回復中のハルは、顔の上も下もトゲトゲ状態の珍しい状態になってくれている。面白いので、しばらくそのままでいて欲しいのだが、アワ玉をバリバリ食べて、さっさと元通りになってしまうのだろう。残念なところだ。

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