セン逝去

 朝、センの姿がない。箱巣に入ったきりなのだ。7時になっても姿を現さないので、キューを出し、箱巣を開ける。それにも気づかず丸くなって眠っていた。はっきり重体である。
 とりあえず、薬を点滴して善後策を考える。まず、覚悟はする。エサも食べられずこもりきりの状態となれば、十中八九は助からない。途中で息絶える恐れの方が大きいので、通院も選択肢からはずれる。まして、何でも手をつくす病院へ行って、奇跡にすがる思想はない。注射やネプライザーなどを施した挙句に病院何ぞで死なれるのは、個人的に一番納得できないのだ(これは人それぞれ。私の考えでは、小鳥の治療は自力で薬が飲める状態まで)。
 カゴの下段をバリアフリー化しても、つぼ巣の出入りも困難に思われたので、日中はより保温と看護がしやすいように、牧草を敷いたマス箱に入れることにした。濡れタオルを上に掛けて、400W電気ストーブの前に置くのだ。マス箱には普通のエサ、アワ玉、水を設置し、アルカリイオン水の点滴で脱水症状を防止しつつ、自力でエサが食べられるまでになればと考えたのだ。
 文鳥の成鳥、特に非手乗りの場合、強制給餌はほとんど不可能なので(絶対に口を開かないことが多く、無理すると体力の消費が大きくなってしまう)、自力でエサを食べられるかどうかが、非常に大きな意味を持つことになる。センの場合は、強制給餌は出来ず、薄めてクチバシの横にたらしてみても、飲み込んではくれなかった。

 午後2時半、ヒナの餌づけを終え、センに薬を点滴することにする。飲み込めない。心音ははなはだ微弱で、手のひらに伝わってこない。ここに至って回復をあきらめる。キューを出し、カゴの下段につぼ巣を設置する。いかにうっとうしくとも、センにとってはキューの側が一番のはずだ。
 カゴから出てきたキューに、左手のセンを見せつつ、指に湯づけ餌を置く。キューはもちろんパクパク食べる。センはごく小さく一声鳴いたのみで、それを真似する元気などなかった。
 つぼ巣をプラスチック製の巣かけに固定し、底面につくように設置し、センをそこに入れ、キューも帰らせる。予想通りキューはセンのいるつぼ巣に入り込み、せわしなく動き回り、センはつぼ巣の上にたたずむことになってしまった。そこでセンを捕獲しつぼ巣に戻す。その後、センは箱巣に帰ろうとして上段に行こうとするが失敗し、結局自発的につぼ巣にもぐりこみ、安静状態にはいった。
 その後気がつくと、保温器の熱をもっとも受けやすい位置に移動し、じっとしていたが、午後6時頃、ヒナの餌づけを終え、水分の点滴をしようとしたところ、すでに亡くなっていた。合掌。

 結局、何の病気だったのだろう。病院でわかったのは、フンに粘膜が見られ胃腸が相当おかしいと言うことだけ、内臓に腫れは見られなかったようだし、真菌も寄生虫も見当たらなかったようだ。
 考えてみれば、昨シーズンは安産続きだったのに、今回は難産があり、産卵数も3個と尋常ではなかった。とすれば、一ヶ月前に何かしら問題を抱えていたのかもしれない。それは何なのか、・・・素人が知ったところでどうなるものでもあるまい。一ヶ月前に気がついたら、名医どころか神も悪魔も逃げ出しただろう。
 我が家の生活にも慣れ、二世も誕生し、ある程度育ててもくれたのに、まったく残念なことだ。「テン」には母親の分も長生きしてもらわねばなるまい。

 その「テン」は、やたらと食欲旺盛で23g、一方の「ポン」は28gであった。

「ポン」20日目、「テン」16日目
「ポン」20日目、「テン」16日目

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